2015 Fiscal Year Annual Research Report
X線自由電子レーザーを用いたポストスピネル相転移のフェムト秒時分割観察
Project/Area Number |
25707041
|
Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
丹下 慶範 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (70543164)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | レーザー衝撃圧縮実験 / X線自由電子レーザー / 相転移ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、これまでマクロな時間スケールでしか観察されたことのない高圧構造相転移のダイナミクス解明に向けた、X線自由電子レーザーおよびパワーレーザーを用いたフェムト秒時分割衝撃圧縮その場観察実験技術の開発、実験システムの構築・高度化を目的としている。 2014年度までに、大阪大学グループを中心に導入された40 TWレーザー、レーザー衝撃圧縮実験用真空チャンバー、および本課題を用いて整備した試料ステージやホルダー等を用いた再現性の高いポンププローブ測定が可能になり、本格的なデータ収集を始めていた。 2015年も引き続き0.6ナノ秒のパルス幅を持つショートパルスレーザーを用いたレーザー衝撃圧縮その場観察実験を進め、広島大学、神戸大学、岡山大学からなる研究グループとの共同研究として、石英やカンラン石など地球惑星科学関連物質に関するポンププローブ測定を行った。特に石英については試料内部の圧縮状態を精密に観察することができ、試料内部で衝撃波が到達した直後の圧縮状態と衝撃波が通過し、圧縮状態から解放される過程における状態の違いを、X線回折測定による構造観察にもとづき明らかにすることができた。さらに年度後半には、新たに導入されたパルス幅10ナノ秒のロングパルスレーザーを使用した衝撃圧縮その場観察実験を行った。その結果、これまでショートパルスレーザーを用いて観察してきた異なる時間スケールで物質の圧縮状態を観察することが可能となり、高圧相転移と思われる構造変化を衝撃圧縮下の石英で初めて観察することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に加え、ショート/ロングパルスレーザーを用いたカンラン石や石英単結晶試料のポンププローブ実験が実施できている。特に石英については、単結晶試料を用いて衝撃圧縮下、変形しつつある試料内部における格子面間隔のサブピコ秒時分割測定が完了している。衝撃圧縮下・高歪み速度下におかれた結晶性試料の変形について、起きている現象の理解について深く議論できる、十分に質の高い超高時間分解能データが収集できた。さらにロングパルスレーザーを用いた実験では、高圧相転移と思われる構造変化が衝撃圧縮下の石英について初めて観察されており、これは世界的に見て新規性のある結果である。現在はまだ予備的な測定を行った段階だが、最終年度内の成果発表を目指し、ポンプレーザー照射後の遅延時間を変化させた定量データの蓄積を進める。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までに単結晶石英試料について、ショート/ロングパルスレーザーを用いたポンププローブ実験が実施できており、特にショートパルスレーザーを用いた測定に関しては、主なデータ収集が完了している。石英に加え単結晶カンラン石、多結晶サファイヤについても予備的な測定をすでに行っており、今後はこれらの試料について主にロングパルスレーザーを用いたポンププローブ測定を進める。ポンプレーザー種や出発物質を変えることで、超弾性圧縮や単相から単相への相転移、分解相転移など幅広い現象の観察を試み、最終的に総括を行う。実験設備が整い高度化が進んだ結果、再現性の高い定量的なデータ収集が可能になり、2015年度は国内外の学会で本研究課題に関連した発表が数多く行われた。最終年度はより一層成果発表を進める。
|
Causes of Carryover |
本研究課題で整備する物品のうちX線自由電子レーザー施設で使用するものの多くが、実験機会のたびにテストを進めて半年ごとに再設計を行い改良を加え、高度化する必要がある。そのため設備備品費として計上した基金分は今年度で使用しきらず次年度以降にも使用することとした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
ロングパルスポンプレーザーの導入や複数種類の出発物質の使用による様々な構造変化を効率よく観察するために、プラットパネルディテクターの導入計画がある。それにともなうターゲットチャンバーの大幅な改良に使用する。またポンププローブ測定の再現性の高さを生かした高統計データ収集を行うため、精密両面研磨試料を大量に用意する。
|
Research Products
(20 results)
-
-
-
[Journal Article] Generation of pressures over 40 GPa using Kawai-type multi-anvil press with tungsten carbide anvils2016
Author(s)
T. Ishii, L. Shi, R. Huang, N. Tsujino, D. Druzhbin, R. Myhill, Y. Li, L. Wang, T. Yamamoto, N. Miyajima, T. Kawazoe, N. Nishiyama, Y. Higo, Y. Tange, and T. Katsura
-
Journal Title
Review of Scientific Instruments
Volume: 87
Pages: 024501
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
[Presentation] In situ XFEL measurement system for Earth and planetary materials under laser-induced ultrahigh-pressure conditions2015
Author(s)
Y. Tange, N. Ozaki, T. Matsuoka, T. Ogawa, B. Albertazzi, H. Habara, K. Takahashi, S. Matsuyama, K. Yamauchi, K. Tanaka, R. Kodama, T. Sato, T. Sekine, Y. Seto, T. Okuchi, T. Yabuuchi, Y. Inubushi, M. Yabashi
Organizer
AGU Fall Meeting 2015
Place of Presentation
San Francisco, USA
Year and Date
2015-12-14 – 2015-12-18
Int'l Joint Research
-
-
[Presentation] XFELを用いた衝撃圧縮下の炭素凝集過程の超高速観察2015
Author(s)
小川剛史, 尾崎典雅, 高橋謙次郎, 羽原英明, 松岡健之, 田中和夫, 池谷正太郎, R. A. Ochante M., 喜田美佳, 久保田善大, 佐藤友哉, 西川豊人, 野間澄人, 藤本陽平, 松村祐介, 吉田有佑, 松山智至, 佐野泰久, 山内和人, B. Albertazzi, A. Faenov, 犬伏雄一, 丹下慶範 ほか11名
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ, 広島県広島市
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
[Presentation] First experimental observation of phase transition in tantalum from bcc to orthorhombic Pnma structure2015
Author(s)
B. Albertazzi, N. Ozaki, V. Zhakhovsky, K. Takahashi, H. Habara, Y. Tange, S. Matsuyama, Y. Sano, K. Yamauchi, A. Faenov, T. Pikuz, Y. Kubota, Y. Fujimoto, Y. Matsumura, T. Nishikawa, S. Noma, R. Ochante, T. Ogawa, Y. Yoshida, O. Sakata, Y. Umeda, T. Sekine et al.
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ, 広島県広島市
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
[Presentation] XFELを用いた石英の異常弾性挙動のその場X線回折観察2015
Author(s)
佐藤友子, 関根利守, 丹下慶範, 尾崎典雅, 羽原英明, 高橋謙次郎, B. Albertazzi, 籔内俊毅, 田中和夫, 小川剛史, 兒玉了祐, 奥地拓生, 瀬戸雄介, 松山智至, 山内和人, 犬伏雄一, 富樫格, 矢橋牧名
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ, 広島県広島市
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
[Presentation] XFELを用いたハイパワーレーザーショック下における鉄の相転移観察2015
Author(s)
松村祐介, 尾崎典雅, B. Albertazzi, N. Hartley, 高橋謙次郎, 羽原英明, 松岡健之, 田中和夫, 池谷正太郎, 小川剛史, R. A. Ochante M., 喜田美佳, 久保田善大, 佐藤友哉, 西川豊人, 野間澄人, 藤本陽平, 吉田有佑, 松山智至, 佐野泰久, 山内和人, T. Pikuz, A. Faenov, 犬伏雄一, 丹下慶範 ほか11名
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ, 広島県広島市
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
[Presentation] SACLAにおける高強度レーザーを用いた衝撃圧縮XFELその場観察実験ステーション2015
Author(s)
丹下慶範, 尾崎典雅, 松岡健之, 小川剛史, B. Albertazzi, 羽原英明, 高橋謙次郎, 松山智至, 山内和人, 田中和夫, 兒玉了祐, 佐藤友子, 関根利守, 瀬戸雄介, 奥地拓生, 籔内俊毅, 犬伏雄一, 矢橋牧名
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ, 広島県広島市
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
-
[Presentation] ハイパワーレーザー及びXFELを用いた超高圧研究2015
Author(s)
尾崎典雅, B. Albertazzi, A. Benuzzi-Mounaix, A. Deneoeud, G. Gregori, A. Faenov, 羽原英明, N. Hartley, 犬伏雄一, 石川哲也, 片山哲夫, M. Koenig, 近藤良彦, 松岡健之, 松山智至, 宮西宏併, 奥地拓生, T. Pikuz, 佐藤友子, 佐藤友哉, 佐野孝好, 坂田修身, 瀬戸雄介, 関根利守, 田中均, 田中和夫, 高橋謙次郎, 丹下慶範 ほか7名
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ, 広島県広島市
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
[Presentation] X-ray diffraction observation of shock-compressed quartz2015
Author(s)
T. Sato, T. Sekine, Y. Tange, N. Ozaki, T. Matsuoka, H. Habara, T. Yabuuchi, K. Tanaka, T. Ogawa, R. Kodama, T. Okuchi, Y. Seto, Y. Inubushi, T. Togashi, M. Yabashi
Organizer
International Workshop on “Warm Dense Matter”
Place of Presentation
倉敷アイビースクエア, 岡山県倉敷市
Year and Date
2015-06-07 – 2015-06-13
Int'l Joint Research
-
[Presentation] In situ XFEL measurement system for materials under laser-induced ultrahigh-pressure conditions2015
Author(s)
Y. Tange, N. Ozaki, T. Matsuoka, T. Sato, Y. Seto, T. Okuchi, T. Sekine, H. Habara, K. Tanaka, T. Ogawa, R. Kodama, T. Yabuuchi, Y. Inubushi, T. Togashi, M. Yabashi
Organizer
International Workshop on “Warm Dense Matter”
Place of Presentation
倉敷アイビースクエア, 岡山県倉敷市
Year and Date
2015-06-07 – 2015-06-13
Int'l Joint Research
-
-
-
-