2014 Fiscal Year Annual Research Report
ダイポール磁場配位を用いた電子陽電子プラズマの生成と基礎特性の解明
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25707043
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 晴彦 東京大学, 新領域創成科学研究科, 客員共同研究員 (60415164)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非中性プラズマ / ダイポール磁場 / 反物質プラズマ / 陽電子プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度に製作した永久磁石による小型装置を使用して,ダイポール磁場配位における非中性プラズマの閉じ込め特性と荷電粒子の入射条件の研究を行うと共に,ペアプラズマの生成に必要となる磁気浮上システムの設計を開始した. 閉じ込め及び入射実験では,電場配位の自由度を高める目的で装置の外周部に円筒状電極を新たに導入すると共に,空間的に非対称な電場を3次元的に計算する事で入射条件の軌道計算精度を高めた.タングステンフィラメントから供給される電子ビームの入射実験を行い,永久磁石の作り出すダイポール磁場中で電子雲が100ms程度閉じ込められる事を確認した.これは,プラズマとしての波動現象を観測するために十分な閉じ込め時間である.現在,閉じ込め条件の最適化と,空間電位の直接測定による確度の高い計測法の導入を進めており,閉じ込め性能のパラメータ依存性について実験を継続する計画である.また,ミュンヘン工科大学の大強度陽電子源NEPOMUCにおいて,上記の小型ダイポール磁場装置をビームラインに接続し,陽電子の入射実験を開始した.陽電子入射方式の候補の一つであるExBプレートを使用したドリフト入射実験を行い,強磁場の閉じ込め領域へと陽電子を効果的に入射可能である事を示した.陽電子実験では,新たに導入したシンチレーション検出器を使用して消滅ガンマ線計測を実施し,軌道計算と矛盾しない入射が実現される事を明らかにした. 磁気浮上システムの設計では,小型の反物質プラズマ実験に適した高温超伝導線材及び周辺機器の選定をほぼ完了し,マグネットの安定浮上条件を数値的に調べた.チルト及びスライド不安定性を避ける条件でマグネットのパラメータを想定し,残る上下方向の1次元の不安定性をPID制御により安定化可能である事を確認した.計算結果に基づいて,永久磁石を用いた浮上システムのモックアップの製作を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に従い装置の改善及び各種計測機器の導入を完了し,ダイポール磁場装置における非中性プラズマの入射及び閉じ込め特性の実験研究を実施している. 昨年度までの初期実験では電子プラズマの有意な閉じ込め時間が観測されていなかったが,これまでに電場配位及び計測方法の改良を通して,小型装置としては比較的長いプラズマ閉じ込め時間の観測に成功した.これは,ダイポール磁場配位においてペアプラズマ生成を実現する上で重要な一段階であると考えられる. また,今年度はミュンヘン工科大学のNEPOMUC装置における陽電子実験のビームタイムが採択され,陽電子実験が可能となった.ビームラインの製作及び消滅ガンマ線を用いた測定系の導入を予定通り完了し,永久磁石を用いた小型装置における陽電子実験を開始した.入射に関しては,ビームラインと比較して100倍を超える磁場強度を持つ閉じ込め領域への磁力線を横切る陽電子の輸送が確認された.装置の閉じ込め性能と並んで,トロイダル配位における荷電粒子の効果的な入射方法は本研究課題の鍵となる開発事項であり,今年度の研究を通して,両者について基本的な理解を実験的に得る事が出来た. 基本的性能確認に加えて,今後は上記の閉じ込め及び入射特性のパラメータ特性を詳細に明らかにする必要がある.また,陽電子実験に関しては,ダイポール磁場配位においてドリフト入射の後に回転電場の効果を用いて,径方向に荷電粒子群を圧縮可能であるとの予備的な計算結果を得ている.現在,計算結果に基づいて回転電場を発生する電極の製作を進めており,新方式による入射及び閉じ込めを実験的に実現する事を計画している.なお,これらの計画を含むビームタイム使用提案は,NEPOMUC装置の2015年度の原子炉運転期間にも採択されており,陽電子及び電子継続して実施可能な状況にある.
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Strategy for Future Research Activity |
ダイポール磁場装置における電子及び陽電子の入射閉じ込め特性を,引き続き実験及び数値計算を通して明らかにすると共に,磁気浮上装置の開発研究を進める計画である. 昨年度に引き続き,ミュンヘン工科大学のNEPOMUC装置において今年度もビームタイム使用権が採択されており,小型ダイポール磁場装置において陽電子実験を継続して実施する計画である.特に,従来のExB電極に加えて回転電場を導入すると共に,タングステン薄膜のリモデレータを閉じ込め領域の極めて近傍に設置し,高効率で陽電子を入射する新しい方式を開発する.また上述の通り,昨年度より荷電粒子入射条件の数値解析方法を改善し,空間的に非軸対称な3次元的な電場計算を含む軌道計算を開始した.新しい計算を用いて電子実験についても高精度な計算を実施し,さらなる閉じ込めの高性能化を目指す.入射及び閉じ込めの双方の実験について,詳細なパラメータ依存性の計測が進行中であり,これらの課題を進める事が直近の研究課題である. これらの一連の研究に基づいて,電子と陽電子をダイポール磁場中でペアプラズマとして捕獲する事が本研究の最終目標である.そのためには,閉じた磁力線を形成する磁気浮上させたマグネットを持つダイポール磁場装置を開発し,異なる符号を持つ電荷群の効率の良い入射方法を確立が必要となる.装置開発については,所属機関内外の研究者と連携して研究を進展させる必要があり,可能な方策の検討を進めているところである.2成分プラズマの入射に関しては,大電流が容易に得られる電子ビームの入射が比較的容易と考えられる事から,陽電子を継続して長時間入射して高密度の陽電子プラズマを生成した上で,バンチさせた電子ビームをパルス的に入射する方式が現実的と考えており,数値計算に基づく解析を進め,実験に供する計画である.
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Causes of Carryover |
当初計画では,NEOMUC施設における陽電子実験に供するためのシンチレーション検出器及びビームライン製作のための真空部品等に支出を計画していた.これらの一部について,NEPOMUCを管理するミュンヘン工科大学において共有設備として本研究で使用可能である事が分かったため,該当部分の支出が減額となり,次年度死闘額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度の研究を通して,装置の電場構造の最適化により荷電粒子の入射及びプラズマの閉じ込め性能を改善する可能性が示されている.こうした実験及び数値計算の結果に基づいて装置の改良を行い,回転電場の導入等の自由度の高い実験を実施する計画である.
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Status of A Positron-Electron Experiment (APEX) towards the formation of pair plasmas2014
Author(s)
H. Saitoh, J. Stanja, T. Sunn Pedersen, U. Hergenhahn, E. V. Stenson, H. Niemann, N. Paschkowski, C. Hugenschmidt, G. H. Marx, L. Schweikhard, J. R. Danielson, C. M. Surko
Organizer
11th International Workshop on Non-neutral Plasmas
Place of Presentation
サンポートホール高松(香川県高松市)
Year and Date
2014-12-01 – 2014-12-04
Invited
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