2014 Fiscal Year Annual Research Report
光合成光捕獲系における電子エネルギー移動ダイナミクスとその環境適応性の分子理論
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25708003
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
石崎 章仁 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 特任准教授 (60636207)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電子エネルギー移動 / 光合成光捕獲系 / 二次元分光法 / 量子ダイナミクス / タンパク質ゆらぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成光捕集系におけるエネルギー移動・電荷分離ダイナミクスを解析する有用な実験手法の一つとして二次元電子分光法が挙げられる。光合成光捕集系二次元電子分光データに見られる量子ビートの物理的起源に関して、2009年のIshizakiとFlemingによる理論予測と2010年のEngelグループによる実験データの解析に基づき、色素分子の0-0振電遷移と別の色素分子の0-1振電遷移の量子力学的混合と複数のレーザーパルス照射により誘起される電子基底状態・電子励起状態両方の振動コヒーレンスが提案されている。今年度は、色素分子の振電遷移間の量子混合がタンパク質環境に起因する揺らぎによってどのように破壊されるのかを解析し、分光データの温度依存性について整合性のある描像を与えることができた。また、タンパク質環境における揺らぎや再配置過程の中で振電遷移間の量子混合が電子励起エネルギー移動のダイナミクスに与える影響について解析し、振電遷移間の量子混合は二次元電子分光スペクトルに明白な影響を与えたとしてもエネルギー移動ダイナミクスには本質的な寄与を与えないことを明らかにした。これらの結果は、Y. Fujihashi, G. R. Fleming, A. Ishizaki, J. Chem. Phys. 142, 212403 (2015) として出版され、2014年度内に8件の招待講演の機会を得た。 さらに現在、昨年度に得た光誘起電子移動反応における色素分子の電子状態揺らぎの時間スケールと色素の電子励起の量子力学的非局在化との競合に関する成果を踏まえ、緑色植物の光化学系II反応中心における初期電荷分離過程についても同様の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電子励起エネルギー移動・初期電荷分離の量子ダイナミクス・分光スペクトルの解析にやや時間がかかり、電子励起エネルギー移動制御に関わる光捕集タンパク質の機能の解析が当初の予定よりやや遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、やや遅れている電子励起エネルギー移動制御に関わる光捕集タンパク質の機能の解析に重心を置く。米国マサチューセッツ工科大学に分光実験を行う共同研究者を得たので、理論・実験で密に連携しながら研究することが可能となった。
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Causes of Carryover |
昨年度より効率よい研究の進展のため博士研究員を1名雇用した。その人件費のために研究費使用計画を一部変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度からの基金助成金と次年度の基金助成金とを合わせて博士研究員雇用の人件費として用いる計画である。
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Research Products
(15 results)