2016 Fiscal Year Annual Research Report
光合成光捕獲系における電子エネルギー移動ダイナミクスとその環境適応性の分子理論
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25708003
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
石崎 章仁 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 教授 (60636207)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 量子動力学 / 電荷分離 / エネルギー移動 / 光補集 |
Outline of Annual Research Achievements |
シングレット・フィッションは1つの一重項励起状態から2つの三重項励起状態に分裂する過程であり、ペンタセン等の有機結晶で観測されている。この現象を利用することで有機太陽電池の光電変換効率の向上が期待されるため、フィッションの反応速度を支配する分子機構の解明に向けて近年多くのグループによって盛んに研究されている。 最近報告されたペンタセン誘導体のいくつかの超高速分光実験により、分子内振動モードが超高速のフィッション過程の実現に重要な役割を果たす可能性が示唆されている。しかし、従来の多くの量子動力学理論による研究では、分子内振動が誘起する電子状態の揺らぎの記述はタンパク質環境、溶媒による揺らぎの記述に適切であるoverdampedブラウン振動子モデルによって粗視化され、分子内振動の物理的描像を無視した揺らぎの記述に基づいてフィッションの解析が行われてきた。本研究では、分子内振動による揺らぎの記述にunderdampedブラウン振動子モデルを用いることで、理論モデルと分光データの整合性の取れたフィッション反応のモデル化を試み、分子内振動モードがフィッション反応のダイナミクスに与える影響について解析した。本研究の理論モデルは分光実験によるペンタセン誘導体のフィッション速度、温度依存性、二次元電子分光の振動コヒーレンスの寿命を再現できている。このモデルの解析によって、従来の理論研究の予測と異なりフィッションのダイナミクスが分子内振動モードの振動数に非常に敏感であることを示した。また、一重項励起状態と三重項励起状態間のエネルギーギャップ、分子内振動の振動数の値がどのような条件のときにフィッションの反応速度が最適化されるかを検討した。 これらの成果は、J. Chem. Phys. 146, 044101 (2017)として出版された。また、本プロジェクトに関連して、日本、米国、韓国、インドにおける会議において11件の招待講演の機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に開始したシングレット・フィッションの理論解析は準備研究の段階であり、実験結果との定量的な比較・検討を可能となるような詳細な理論モデルの構築が望まれた。実際、Kukuraらの実験により分子内振動の寄与が指摘されている (Musser et al, Nat. Phys. 11, 352 (2015))。平成28年度は、特に分子内振動などの寄与を取り入れた、より現実に即した理論モデルを構築し理論解析を進め、Y. Fujihashi, L. Chen, A. Ishizaki, J. Wang, and Y. Zhao, "Effect of high-frequency modes on singlet fission dynamics," J. Chem. Phys, 146, 044101 (2017).として出版した。 )
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方向性としては、環境自由度やフォノンを制御することで注目する量子ダイナミクスを制御するエンバイロンメンタル・エンジニアリングの視点も念頭に置きながら、研究の展開を図りたい。また、分光スペクトルのモデリング・計算を通して、実験結果の解析について理論研究を進める。
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Causes of Carryover |
本研究計画遂行のための研究協力者が2016年4月より海外研究機関に転出となり、当初計画していた予算計画を変更する必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新規研究協力者の伴う人件費・謝金、および成果発表・情報収集のための出張経費として使用する。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Enhancing function in chemical and biophysical systems using coherence2017
Author(s)
Scholes, G.D., Fleming, G.R., Chen, L.X., Aspuru-Guzik, A., Buchleitner, A., Coker, D. D. F., Engel, G. S., van Grondelle, R., Ishizaki, A., Jonas, D.M., Lundeen, J.S., McCusker, J.K., Mukamel, S., Ogilvie, J.P., Olaya-Castro, A., Ratner, M.A., Spano, F. C., Whaley, B.K., Zhu, X.
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Journal Title
Nature
Volume: 543
Pages: 647-656
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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