2014 Fiscal Year Annual Research Report
シリレンの単一ケイ素上に共存するルイス酸・塩基部位を利用したπ電子系改変反応
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25708004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石田 真太郎 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (90436080)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シリレン / 環化付加 / 含ケイ素環状化合物 / イリド / ラジカル / 酸化還元特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度得られた研究成果を以下に示す。 1. シリレンと環状尿素誘導体との反応では、酸素移動とその後続反応が進行し、シリレンが骨格に組み込まれたアゾメチンイリドやカルベンが得られる事が分かった。この反応は安定カルボニルシライリドを経由していると考えられ、現在反応機構の解明と得られた化合物の機能性について検討している。 2. シリレンとピリジン類との反応では、用いるピリジンに応じて多様な生成物を与える事が分かった。一部のピリジン誘導体では、脱芳香族反応によるアザシレピンの生成と、2位のCH結合にシリレンが挿入する反応が条件に応じて進行した。また、電子豊富なピリジンとシリレンは予想に反して室温では反応が進行しなかった。反応溶液の分光学的測定の結果より、シリレン-ピリジン錯体は生成するものの、そこからの反応が進行しないことが分かった。これらの結果はシリレンのルイス酸性とルイス塩基性を併せ持つ両性を反映しており、現在データの吟味を行っている。 3. シリレンとビピリジン類の反応では、期待通り脱芳香族化に伴う不飽和高度共役系が得られた。電気化学測定から、得られた分子の電子供与能はかなり高い事が分かった。 4. シリレンのアニオンラジカルと等電子構造のホスフィニルラジカルと安定ラジカルであるTEMPO等との反応では、酸素移動によるホスフォリルラジカルとアミニルラジカルの発生とその分解反応が進行するという知見が得られた。この詳細を論文として発表した。またその高周期類縁体であるアンチモンやビスマス中心ラジカルを溶液中で発生させ、そのの観測を行った。この結果は溶液中これらのラジカルの存在を明確にした初めての例である。この内容はAngewandte Chemie International Edition誌に掲載された際にFrontispieceに採用されるなど、高い評価を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究課題のうちいくつかを論文として取りまとめることが出来た。特にその一部(アンチモン及びビスマス中心ラジカルの分光学的観測)は審査員から高い評価を受けている。またシリレンとカルボニル化合物やピリジン誘導体との反応では予想外の興味深い知見が得られた。そしてそれらの解析は着実に進んでおりデータの吟味の段階に入っている。しかしながら、これらの結果については予想外故に慎重に調べる必要があるため、データの取りまとめと論文投稿は次年度に持ち越しとなった。以上、予想以上の進捗があった部分と、達していない部分を勘案して上記の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度で論文投稿の段階までは至らなかった部分について、質を高めるための研究を最優先で進め投稿まで完了させる。同時進行で本来の予定にあるオリゴシレピンやオリゴ(シラシクロプロペン)の合成と物性解明に取り組む。
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Causes of Carryover |
研究実績の概要に記述した様に、本年度はシリレンアニオンラジカルと等電子構造のホスフィニルラジカルやそのアンチモンおよびビスマス類縁体の反応とその化学で著しい進展があり、その研究および論文投稿を優先して進めた。そのため当初予定していた研究、すなわちシリレンを用いたオリゴフェニレンからオリゴシレピンへの変換反応の開発とその脱芳香族化反応の詳細な検討は次年度行うことになった。また、シリレンとカルボニル化合物およびピリジン誘導体との反応開発についても、データの詰めの部分は本年度中に完了しなかった。これらの研究で生じる試薬類や消耗品類、機材については本年度購入せず、次年度研究の進捗に応じて購入することにしたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は上記理由で示した用途に使用する。すなわち本年度に取りまとめ切れなかった、シリレンとカルボニル化合物およびピリジン誘導体との反応検討、ならびにシリレンを用いたオリゴフェニレンからオリゴシレピンへの変換反応の開発とその脱芳香族化反応の研究で用いる試薬類や消耗品類、機材の購入に使用する。また、研究が進展した場合にはその成果発表および研究打ち合わせのための旅費、資料作成補助のための人件費、謝金も必要になると考えられる。さらに論文作成に必要な印刷費や理論的考察を行うための計算機センターの使用に関わる費用も必要である。そのため、これらの費用についても次年度使用額から支出する。
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Research Products
(10 results)