2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25708008
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
村瀬 隆史 山形大学, 理学部, 准教授 (70508184)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 自己組織化 / 単分子伝導度 / 包接 / 電子ドナー / 電子アクセプター / 分子デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
芳香族分子の集積体(πスタック)を介した電荷輸送は、有機電子デバイスにおいて重要な役割を担っている。平成27年度は、有機ピラー型かご状錯体を用いて構築される芳香環有限集積体に着目し、かご状錯体の内部に包接される芳香族分子の入れ替えとそれに応じた電子機能の発現を目指した。 電子ドナー性ゲストとしてトリフェニレンを、電子アクセプター性ゲストとしてナフタレンジイミドを選択し、ドナー性ゲスト同士が集積したホモ集積体と、ドナー性ゲストとアクセプター性ゲストのペアからなるヘテロ集積体をそれぞれ合成した。集積体の熱力学的安定性は、ホモ集積体<ヘテロ集積体となった。集積体の単分子伝導度を測定すると、ホモ集積体は単一の伝導度ピークを示したのに対して、ヘテロ集積体は複数の伝導度ピークを示した。この結果は、ヘテロ集積体に特徴的なドナー/アクセプター性ゲストの積層順序に起因し、ヘテロ集積体は整流特性を有することが分かった。理論計算から、順バイアス方向はドナー→アクセプター方向であることが示された。芳香族分子を内包していない空のかご状錯体では、伝導度は極めて小さかった。以上より、かご状錯体の中に入れる分子の組み合わせで、抵抗・導線・ダイオードを作り分けることに成功した。 得られた成果は、アメリカ化学会誌J. Am. Chem. Soc. (2015) vol. 137, 5939-5947にて論文発表した。本成果は、「電子回路を組んだ後でも回路部品の機能を入れ替えられる素子を1つの分子で実現した」ことを意味し、日刊工業新聞(2015年6月22日号)にも掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究課題の目玉の1つである有機ピラー型かご状錯体の電気伝導度測定を、電気伝導度の計測の専門家と理論計算の専門家との共同研究により行うことができ、論文として発表することができた。芳香族ヘテロ集積体の電気伝導度測定により整流特性を発現させることに成功したが、金属クラスターの電気伝導度測定までには至らなかった。総合的に判断すると、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
有機ピラー型かご状錯体は、ピラー型配位子の長さを調製することで、Au3n (n = 1-3)イオンクラスターを一義的に合成することができる。この金属イオンクラスターに異種金属イオン(例えばAg)を導入することで、ヘテロ金属イオンクラスターを合成し、その電気伝導度特性を調べる。Au3nイオンクラスターの伝導度は、積層するAu3核錯体どうしが多点でAu-Au相互作用をするため、高い伝導度を示したが、Agイオンを導入することでAu-Au相互作用が働かなくなり、伝導度が減少すると予想される。最終的に、金属イオンの包接/放出によって伝導度が変化する分子デバイスが作成できることを示す。伝導度測定や理論計算は引き続き、共同研究体制で行う。 平成27年度では、ヘテロ積層型の芳香族有限集積体の伝導度特性を明らかにした。平成28年度では、芳香族分子と金属錯体のペアからなるヘテロ積層型の有限集積体の伝導度特性の解明にも挑戦する。電子豊富な大環状ベンゼンーアルキンπ共役分子(電子ドナー)と、電子不足なピラゾール架橋3核Ag錯体(電子アクセプター)を、有機ピラー型かご状錯体内でペア集積させる。合成したヘテロ積層体の構造は、NMR, MS, X線結晶構造解析により決定する。得られた結果を取りまとめ、学会発表や専門誌にて発表する。
|