2015 Fiscal Year Annual Research Report
チェーンウォーキングを利用した高度な触媒的有機合成法の開発
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25708019
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
河内 卓彌 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (70396779)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | チェーンウォーキング / パラジウム触媒 / 選択的異性化反応 / 末端アルケン / シリルエノールエーテル |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は現在までに、パラジウム触媒のチェーンウォーキングを経る1,n-ジエンの環化異性化反応を開発している。しかし、この反応においては最終的に生成物に残るアルケン部位の位置を制御することが困難であり、その有機合成上の有用性を限定的にしていた。そこで、チェーンウォーキングを経た後に生成するアルケン部位の位置を制御することが官能基について探索を行った。具体的には、末端アルケン部位と各種官能基を併せ持つ基質の異性化反応を検討し、アルケン部位を官能基周辺の収束することが可能であるか調べた。 検討の結果、シロキシ基をもつ末端アルケンを用いて、パラジウム触媒による異性化反応を行うと、選択的なシリルエノールエーテルの生成が可能であることがわかった。本反応は種々のシロキシ基をもつ基質や、シロキシ基とビニル基の間に様々な長さのメチレン鎖をもつ基質に適用可能であり、20炭素分のチェーンウォーキングを必要をする基質を用いても、単離収率70%で対応するシリルエノールエーテルが得られた。また本反応は炭素鎖上に分岐をもつ基質にも適用可能であった。一方、内部アルケンに対しても本反応は適用可能であったが、反応は比較的遅く、収率も低下した。 また、チェーンウォーキングを経る反応は、途中での速いアルケン交換を含む段階的なアルケン異性化反応と異なり、一度、金属-炭素結合を形成すると、反応終了点まで触媒金属が基質から解離せずに反応すると考えられる。そこで、比較的反応性の高い末端アルケンを内部アルケンの存在下で反応させると、末端アルケンのみを選択的に異性化できるのではないかと考え検討したところ、完全ではないものの選択的に末端アルケンを異性化させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アルケンの選択的異性化反応の開発には至っているが、環化異性化反応などの高度な触媒プロセスへの応用には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今までに開発した付加型反応と組み合わせた環化反応やアルケンの選択的異性化反応を利用して、高度かつ選択的な環化反応の開発を進める。
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Causes of Carryover |
研究計画にあった項目のうちの一つである、高度な複合型反応の開発に関して、解決すべき課題が見つかり、最適化するのに予想以上の時間を要した。また反応の不斉化に伴って用いていたHPLC装置の不調により、安定した測定を行える状態に戻すのに時間を要した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は、27年度の問題の解決とともに、高度な複合型反応およびその不斉化を進める予定である。具体的には、反応開発に伴う新しい基質の設計、合成や試薬の入手を行い、また現行のHPLC装置のままでの測定が困難な場合には、必要に応じて改善策を講じる。
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Research Products
(10 results)