2013 Fiscal Year Annual Research Report
バルク系ホスト-ゲスト化学が拓く次世代超分子マテリアルの創成
Project/Area Number |
25708022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
生越 友樹 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (00447682)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ピラーアレーン / バルク / ホスト―ゲスト化学 / ポリロタキサン |
Research Abstract |
バルク系ホスト―ゲスト化学に基づくスリップ法による[2]ロタキサンの合成 末端にバリン基を有する軸分子を、トリエチレンオキシド(TEO)基を導入したPillar[5]arene液体にバルクで混合し、加熱撹拌を行うと、[2]ロタキサンを形成することが明らかとなった。収率は50%であった。これは過去に報告されたスリップ法によるロタキサン合成と比較して、非常に高収率であった。バルクでスリップ法を用いることが、非常に有用なためである。 バルク系ホスト―ゲスト化学に基づくポリロタキサン・トポロジカルゲルの合成 TEO基を導入したPillar[5]arene液体中に、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)をバルクで溶解させ、ポリ擬ロタキサンの形成を行った。その結果、Pillar[5]arene液体中では、ポリ擬ロタキサンを形成した。一方、溶媒を用いた場合は全くポリ擬ロタキサンを形成していないことが分かった。末端の封鎖反応を行うと、60%を超える高効率でポリロタキサンが形成しており、40%程度の中程度の収率でポリロタキサンを得ることができた。一方、溶媒を用いた場合は、収率は非常に低くなり、Pillar[5]arene液体のバルク中でポリロタキサンを形成させたほうが高効率であることが明らかとなった。また、TEO基の末端にアルケン基を有するPillar[5]arene液体を合成した。PTHFを溶解させ、キャッピング反応を行うことにより、ポリロタキサンを得ることができた。さらに、末端アルケン同士をメタセシス反応により架橋させることで、トポロジカルゲルの合成に成功した。得られたトポロジカルゲルは、クロロホルム・THFといった中程度の極性である有機溶媒に膨潤し、水やメタノールといった極性溶媒、ヘキサンのような非極性溶媒には膨潤しないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バルク系ホスト―ゲスト化学という概念を基に、当初の目標であったポリロタキサンの合成に成功した。また液体環状ホスト分子に、反応点であるアルケンを導入した液体Pillar[5]areneを用いることで、これまでは合成が困難であったトポロジカルゲルを合成することにも成功した。疎水性ゲスト分子を溶かす環状ホスト液体の合成は、現段階では至っていないが、ポリロタキサン、トポロジカルゲルといった、これまではPillar[5]areneを用いた場合では合成が困難であった様々な超分子材料を合成することができた。これより、本研究課題は、おおむね順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
様々なゲストを溶解可能な室温環状ホスト液体群の合成 これまでの研究成果から、TEO基を10個導入したPillar[5]areneは室温で液体化することが明らかとなっている。しかし両親媒性のTEO基を導入したPillar[5]areneは、親水性のゲスト分子を溶解させることができるが、疎水性のゲスト分子を溶解できない。これにより、疎水性のゲスト分子を溶解可能な疎水性環状ホスト液体を合成できれば、親水・疎水を問わず様々なゲスト分子を可溶化できる環状ホスト液体群の創出が可能となる。TEO基を10個導入したPillar[5]areneが液体になった理由は、TEO 構造が繰り返し単位である高分子、ポリエチレンオキシドの融点が低いためだといえる。つまり融点の低い汎用性高分子の部分骨格をPillar[5]areneに導入すれば、液体化に繋がると予測される。他の低融点高分子はポリジメチルシロキサンやポリイソプレンがある。これら高分子はポリエチレンオキシドよりも疎水性であるため、これらの部分骨格をPillar[5]areneに導入すれば、非極性な化合物と混和可能な環状分子液体になると期待される。エーテル化により様々な置換基を導入する手法は確立していることから、これら置換基の導入もエーテル化によって試みる。構造決定はNMR、MSにより行う。 高分子の部分骨格・相互作用部位を導入した環状ホスト分子の合成 ポリエチレンの部分骨格である直鎖アルカンを側鎖に有するPillar[5]areneは、溶融状態のポリエチレンと相溶し、CH/π水素結合によりポリ擬ロタキサン構造を形成することが分かった。これを基に本申請では、高分子の部分構造部位を導入したPillar[5]areneの合成をエーテル化により行う。
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