2015 Fiscal Year Annual Research Report
インデンテーションによる動的構成式定数の導出方法の開発
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25709004
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
山田 浩之 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 講師 (80582907)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マルチスケールインデンテーション / 代表ひずみ速度 / 動的構成式定数 / 衝撃インデンテーション / 準静的インデンテーション / ひずみ速度 / 有限要素解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主要目的は,インデンテーションで得た荷重変位曲線から動的強度特性(構成式定数)を求める逆解析方法を開発することである。H26年度でインデンテーションから得られる負荷曲率に及ぼすひずみ速度の影響を利用し,応答曲面法を利用した逆解析手法を有限要素解析により示した。しかし,誤差が大きく,新しい手法が必要となった。また,マイクロスケールでの実験のため,微視スケール(材料表面に生成される酸化膜厚さ,結晶粒径および方位,表面粗さなど)の影響により,実際の実験との整合性も課題となる。そこで,H27年度は,下記の研究を行った。 1.マルチスケールインデンテーション:昨年から開始した変位量をマイクロメートルからミリメートルまで拡張したマルチスケールインデンテーションの開発が完了した。従来のマイクロインデンテーションと比較すると,試験結果のばらつきは低減され,信頼性の高い実験結果を得ることが可能となった。また,準静的インデンテーションおよび落錘試験装置を応用した衝撃インデンテーションを行うことで,幅広い範囲の速度依存性の評価ができた。3.代表ひずみ速度:昨年度,数値実験により,代表ひずみを用いてひずみ速度場を平均化させた「代表ひずみ速度」を定義した。そして,負荷曲率を代表ひずみ速度およびCowper-Symondsの式の動的構成式定数を用いた構成式として表すことができることを発見した。そこで,マルチスケールインデンテーションから得られる負荷曲率曲線と代表ひずみ速度を組み合わせることで,新しい動的構成式定数の決定手法を確立した。 この新しい手法は,従来の応答曲面法を用いた手法と異なり,インデンテーションにおけるひずみ速度の物理的意味を包含して提案しているため,信頼性が高い手法に成り得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H27年度は,応答曲面法のさらなる改善とインデンテーションのマルチスケール化の確立が主な目的であったが,応答曲面法に関しては,当初の計画よりも誤差が大きく,改善のためにいろいろな条件を検討したが,実用性に課題が残った。そこで,考えた方をより物理的意味を包含させる方法に変更し,「マルチスケールインデンテーション」の開発完了と「代表ひずみ速度」の定義,およびこれらの成果を組み合わせた新しい動的構成式定数の決定手法の確立に至った。よって,当初の目的よりもより精度の高い結果が得られるようになったことから,当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,最終年度として,マルチスケールインデンテーションと代表ひずみ速度を利用した手法に,温度の効果を加味し,より現実的な構成則の決定手法の確立を目指す。 (1)Johnson-Cookの式の導出:Cowper-Symondsの式では,ひずみ速度の影響しか考慮できないため,衝撃変形時の温度上昇の効果,高温高速圧延の評価などには適用できない。そこで,さらなる構成式の精度向上のために温度も考慮したJohnson-Cookの式を求める手法を確立する。そのために,高温および低温環境において速度を変化させたマルチスケールインデンテーションを行う。高温(室温~300℃),および低温環境(-196℃(液体窒素)および-78℃(ドライアイス+エタノール))の幅広い温度範囲でインデンテーションを行う手法を確立する。 (2)Kocks-Meckingモデルの検討:金属における転位運動の熱活性化過程を考慮したKocks-Meckingモデルの導出をマルチスケールインデンテーションにより行い,従来の単軸試験に代わる材料強度のひずみ速度・温度依存性評価手法となることを示す。 (3)研究総括:開発した動的構成式決定手法を様々な構造材料(超高強度アルミニウム合金:メゾアライト,バルクナノメタルなど)へ適用し,適用事例データベースを構築することで,信頼性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
試験片の一部を試供品サンプルで行ったことにより,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度として,幅広い材料のデータ蓄積を考えており,これらの購入費用とする。
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