2015 Fiscal Year Annual Research Report
粘弾性体キャビテーションの時空間多重スケール解析を実現する非侵襲ハイブリッド計測
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25709008
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安藤 景太 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (30639018)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 流体工学 / 熱工学 / シミュレーション工学 / キャビテーション / 非ニュートン流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題(4年計画)では,粘弾性体におけるキャビテーションの時空間多重スケール現象解明を目的とした,実験・数値シミュレーション連成の非侵襲ハイブリッド計測法の開発を行う.集束パルスレーザー誘起の衝撃波およびキャビテーション気泡の微視的観察と均質気泡群モデルに基づく非線形数値シミュレーションを連成させることで,実流動場にプローブを挿入しない理想的な非侵襲計測法を提案する.マイクロ空間環境下におけるキャビテーション気泡群の初生から崩壊に至る現象の微視的計測により粘弾性の効果を定式化し,粘弾性体における気泡群力学の有する時空間多重スケール構造の解明を目指す. 平成27年度(3年目)は,平成25・26年度(1・2年目)に構築した(ナノ秒レーザー,CCDカメラ,高速度カメラ,倒立顕微鏡,除振台から構成される)光学システムに基づき,グリセリンおよびゼラチンゲルにおけるレーザー誘起衝撃波と自由界面との干渉のストロボ撮影,およびレーザー誘起ガス気泡の運動の高速撮影を行った.グリセリンおよびゼラチンゲル(ゼラチン質量濃度10%)におけるキャビテーション初生圧力は,水の初生圧力と同程度であり,粘弾性の影響は限定的であると示唆された.一方,初生後の気泡力学に対しては,粘性・弾性の影響が顕著に現れる.球形ガス気泡の体積振動の実測値とRayleigh-Plesset型の気泡力学モデルを比較することにより,熱力学的散逸による減衰効果の定量評価を行った.グリセリン中の球形ガス気泡(数100μm径)の自由振動においては,全ての散逸機構(粘性,熱伝導,音響放射)が重要な役割を果たすことが示された.さらに,超音波照射下のゼラチンゲルにおける球形ガス気泡(数10~100μm径)の体積振動(並進運動)は,振動振幅(並進量)が十分に小さい場合,線形Voigtモデルにより適切に記述さ得ることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表研究者は,平成22年から24年までの間,ナンヤン工科大学(シンガポール)の博士研究員として,キャビテーションの微視的計測法を構築しており,そのノウハウを適用することで,おおむね計画通り研究が進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度(4年目)の研究では,昨年度までに構築したマイクロ空間環境におけるキャビテーション初生の微視的計測のための光学システムを引き続き利用し,粘弾性体におけるクラウドキャビテーションを高速度カメラ(FASTCAM SA-X2)により撮影し,キャビテーション気泡群の力学に対する粘弾性の影響を定量評価する. 高粘性流体(グリセリン)および粘弾性体(ゼラチンゲル)の媒質中を伝播するレーザ誘起衝撃波ならびに自由界面の挙動に関する実験的観察と,圧縮性を考慮した非線形数値シミュレーション(購入予定の高速計算機(HPCテック)を使用)の比較により,圧力場の時間発展を非侵襲に構築する.シミュレーションにより取得した圧力場と,実験で得られたキャビテーション初生気泡群の空間分布を比較することにより,初生気泡群に対する粘弾性効果を定量的に評価する.さらに,キャビテーション気泡群の平均的な力学挙動を記述する均質気泡群モデル(K. Ando, et al., Int. J. Multiphase Flow (2011))に基づく数値シミュレーションを行い,気泡群崩壊時における衝撃波形成のメカニズムを解明する.
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