2013 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の転倒予防の一助となる歩行時の運動・認知機能計測システム
Project/Area Number |
25709015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 正樹 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (10398638)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 運動力学 / ロボティクス / 人間計測 / 人間支援 / 医療・福祉 |
Research Abstract |
本申請課題では、高齢者が日常生活を営む上で必要な運動機能と認知機能を同時活性化する機能を定量可視化するシステムを構築することを目的としている。また、転倒予防の側面から、豊かな高齢化社会構築への一助となる歩行計測システムの確立を目的とし、多数の高齢者に対して計測可能なシステムを提案、開発し、その妥当性を高齢者の被験者実験より検証する。 平成25年度は、転倒群の高齢者にみられる方向転換時に支持脚に対して先導脚がクロスしてしまう特徴的な歩行(クロスステップ)の検出が可能な歩行計測システムを開発した。また、安全性の面から訓練時には転倒を含む事故防止のため、歩行訓練士が介添えするため、高齢者訓練者と歩行訓練士の歩行特性の識別技術を提案した。具体的には、レーザレンジファインダで取得した距離情報から五種類の観測パターンに基づく脚検出手法および立脚、遊脚、速度などの脚の状態に基づく対応付け(相関処理)により両脚の誤識別や見失いが生じにくい手法を提案した。開発した歩行計測システムを大学施設での若者での検証の後、高齢者の被験者実験を実施し、両脚の位置、速度を推定し、かつ、追跡可能であること、脚の交差時に隠れてしまう脚の着床、離床時刻を取得可能であることを確認した。本提案技術は開発する移動式の歩行計測システムにおいても核となる要素技術のひとつである。 平成26年度に行う予定であった移動式の歩行計測システムである歩行計測ロボットのプロトタイプとなる全方位移動機構を有する歩行計測ロボットを製作した。ロボットに環境地図生成・自己位置推定技術を実装し、自律で移動するための要素技術を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画は、①レーザレンジファインダの高角度分解能化技術、②マットに等間隔に配置された色付けされたマーカーを踏んで歩く歩行課題に対してレーザレンジファインダを用いた歩行計測システムを開発し、大学施設での若者での検証の後、高齢者の被験者実験で有効性を検証することであった。①のレーザレンジファインダの高角度分解能化技術については、要求される計測範囲、計測精度に対して必要とされる高角度分解能のレーザレンジファインダが発売されたため、高角度分解能化技術は開発せずに、当初予定の計画を前倒しにして移動式歩行計測システムの開発を行った。開発した移動式歩行計測システムは並進運動と回転運動を独立させた運動が必要なため全方位移動機構を搭載した。また、周辺環境を認識するためのセンサとしてレーザレンジファインダを2台搭載し、演算・移動方向指示用演算装置を搭載した。与えた速度指令値に対して製作したロボットが指令通りに動作可能であることを実験的に確認した。 ②については、レーザレンジファインダで取得した距離情報から五種類の観測パターンに基づく脚検出手法および立脚、遊脚、速度などの脚の状態に基づく対応付け(相関処理)により両脚の誤識別や見失いが生じにくい歩行計測手法を開発した。マットに等間隔に配置された色付けされたマーカーを踏んで歩く歩行課題に対して、開発した歩行計測システムの妥当性を検証するためにデイサービスにおいて、高齢者による被験者実験を実施した。16名の被験者による実験により、高齢者の両脚の位置、速度、立脚・支持脚のフェーズ、 転倒群の高齢者にみられる方向転換時に支持脚に対して先導脚がクロスしてしまう特徴的な歩行(クロスステップ)の検出が可能であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、日常生活において転倒の主要因である①段差乗り越えおよび②右左折を含む日常生活に近い訓練環境を想定し、移動式の歩行計測システムを提案する。ロボットと環境を同時に注視する必要があるため認知課題も高度化している。移動方向を支持する画面を被験者に向けて移動する必要があるため、並進方向と回転方向が同時に制御可能な全方位移動機構を駆動系とする自律移動ロボットを開発する。 平成25年度に歩行計測のための自律移動ロボットを製作し,指令速度に対して移動が可能であることを確認している。平成26年度は自律化にむけて,環境地図生成・自己位置推定技術を実装し,推定精度を検証する。また,移動しながら被験者を計測した際の歩行計測精度について汎用的に用いられている3次元動作計測システムのひとつであるVICONと比較して検証する。さらに,レーザレンジファインダの計測領域内における計測位置毎の計測精度を検証する。 転びにくい高齢者は常に1.5~2.0 m先に視線を向けているという知見に基づいて、1.5~2.0 mの距離を保ちながら目標方向へと誘導する経路計画と姿勢制御則を開発する。また、訓練時の被験者の転倒の危険性を低減するため、歩行訓練士が介添えして訓練することを想定し、複数名の歩行特性を検出、識別、追跡可能な技術を開発する。 提案する移動式の歩行計測システムはリアルタイムに計測可能であり、計測項目は、方向指令に対する反応時間、左右の脚の位置、速度の履歴(センサ未取得時の推定を含む)、ストライド長、ストライド時間とする。 開発した歩行計測システムを大学施設での若者での検証の後、高齢者の被験者実験で有効性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
移動式の歩行計測システムである自律移動ロボットの製作にあたり、要求されるロボット重量および移動速度に対して、設計時に試作を行いながらある程度の試行錯誤が必要であると考えていたが、初号機で要求を満たすロボットの製作ができたため次年度使用額が発生した。 平成25年度の開発により被験者の運動機能を計測する技術のベースの開発は完成したと考えている。平成26年度は平成25年度に購入した3次元動作計測システムVICONにより運動機能を計測する技術について、計測精度の検証を行う予定である。 平成26年度は予定より早く歩行計測ロボットの開発ができたため、被験者の認知機能を計る技術の開発に取り組む予定である。開発した技術の妥当性を検証するために被験者の視線が歩行計測ロボットのどの箇所を見ているか評価する必要があるためアイトラッキングシステムを購入する予定である。
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