2014 Fiscal Year Annual Research Report
自律的な微小管輸送によるパッシブ型分子分離システム
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25709018
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横川 隆司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10411216)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 分子操作 / モータタンパク質 / ナノシステム / MicroTAS / キネシン / 微小管 / MEMS / 電気泳動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,課題2として掲げた微小管シードの評価をおこなった.シード長さとビオチン化率が一定であると考えると,シードの電荷量は付加した荷電粒子の種類により決まり,それに応じた電界中での微小管の運動方向の変化が期待される.そこで,平成25年度の課題1で準備したシードの電荷量を電気泳動移動度の違いとして測定した.市販のゼータ電位測定システムを用いて測定する方法を採用し,ビオチン化シード,Alexa488ラベルしたシード,TAMRAラベルしたシード,DNA修飾したシードの電気泳動移動度を測定した.その結果,DNA修飾していないシードについては2.1 ×10−8 m2V−1s−1程度と有意な差は見られなかった。一方,DNA修飾したシードは電気泳動移動度が1.5倍上昇し,DNAにより表面電荷密度が変化したことが明らかになった.計画では,ゼータ電位測定システムによる測定が有効でない場合,電気浸透流を抑えたZero flowキャピラリを用いた計測方法も選択肢として掲げていたが,上記の手法により適切に測定できたと判断して今年度は実施を見送った. 次に,実際に簡便なフローセルを用いて,電界中でのキネシンによる微小管運動を画像解析により評価し,それぞれのシードの曲率を導出した.既に我々のグループで有する微小管運動のトラッキングと曲率を導出するアルゴリズムを用いて計測をおこなった.一方,カンチレバーモデルに基づいて上記の電気泳動移動度から曲率を求めて比較した.その結果,両者は非常に良く一致しており,シードの電気泳動移動度を測定することで電界中での微小管の運動を予測できることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度においては,当初予定していた課題2までが順調に推進できその成果が得られている.電気泳動移動度の測定においては,初案のゼータ電位測定システムを利用した方法で測定することができ,従来のZero flowキャピラリを用いずに簡便に測定できた.当該分野において,新たなかつ簡便な測定法を提案することができた.既にPDMSとガラスを用いた微小流体デバイス内でのアッセイが可能であることを確認しており,今後定量的な測定を進める.このような状況から,平成26年度に予定していた課題に加えて,次年度の課題に取りかかる準備が進んでおりおおむね順調に進んでいる.これらの成果の一部は,マイクロナノシステムに関する国際会議であるMEMSにおいて口頭発表に採択され,さらにScientific Reportsにも論文が掲載された.
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Strategy for Future Research Activity |
既に,平成27年度の課題に取り組み始めており,今後もこのペースで研究を推進する.これまでに準備した各種の微小管シードをさらに重合伸張して,マイナス端のみがビオチン,DNAなどで修飾された微小管を準備した.電気泳動移動度の差がPDMS-ガラスの微小流体デバイス内においてもその運動曲率として反映されることを期待しており,その曲率と微小管シードの曲率,また電気泳動移動度から求められた曲率と一致するかを評価する.デバイス内における「分子分離」という最終目的において曲率の差が十分に得られるかどうかを検討する.つまり,微小管の先端(自由端)に電気泳動力を与えた場合の運動方向の制御について,理論上は数~数10 umの運動方向の差が得られることがわかっているが,これをデバイス内で実証できるかを検討する必要がある. また,電気的な特性だけでなく,微小管の剛性を変化させることで運動曲率が変わることも期待できる.電気的および機械的な微小管の特性を変化させることで,より大きな曲率の変化を得ることも期待できる.平成27年度は,これらの点についても並行して検討を進め最終的には表面電荷密度に加え剛性も設計することでより幅の広い分子設計によるデバイス創製を目指したい.
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Causes of Carryover |
予定していた実験補助員の雇用を見送ったため.また,購入を予定していた光学部品の購入が平成27年度に変更されたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度以降,研究成果を発表する機会が増えることが予想されるため,学会出張などの旅費として使用する予定である.
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Research Products
(14 results)