2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25709028
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久武 信太郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (20362642)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / 周波数領域分光法 / 高感度分光 / 物質同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者独自の自己ヘテロダイン型検出技術を発展させることで、THz 周波数領域変調分光システムを世界に先駆けて開発することを目的としている。50 GHz~2 THz程度の周波数領域において、これまではスペクトルの比較(算術差分)から求めていた差スペクトル計測に初めてロックイン検出を導入 し、1 桁以上の感度向上を実現する。これまで達成できていないppmオーダの微量物質同定や高コントラスト分析化学イメージングを実証することで、次世代THz分光計測の開拓に貢献する。 平成25年度に構築した自己ヘテロダイン方式は、電気光学結晶をEO(electrooptic)センサとして用いる電界センシングへも応用可能であることを実証し、近接場THz分光への展開の可能性を拓いた。また、平成25年度に、光ファイバの僅かな光吸収による温度変動等に起因するTHz波位ドリフトをキャンセルし、THz波振幅測定におけるSN比に制限される理論限界での位相検出感度を達成する新しい差動検出法を開発したが、平成26年度は差動検出方による理論限界の位相検出感度が2.5THzにわたる帯域において実現可能であることを実証した。また、当初の予定の通り周波数校正法を確立し、0.1THzから2.5THzまでの帯域における高精度スペクトル計測を実現した。平成26年度の後半には、変調分光計測法により1桁以上の位相検出感度の向上が得られることを実験的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は、平成25年度に発見した予想外の問題を解決するために考案した新しい差動検出法について深く検討することを優先した。実験的に、差動方式により2THzにわたる周波数領域において、free-running laserと光ファイバ系に基づくシステムであってもTHz波の振幅検出におけるSN比に制限される理論限界の位相検出感度が実現できることを実証した。本成果は、微小変化量を検出することを目的とする本研究に合致している。また、EOセンサを受信器とした系にも本手法が適用可能であることを実証した。この成果は、当初計画したいなかったが、THz近接場分光の可能性を拓く重要な成果である。変調分光に関しては、機械的変調に基づく単一周波数における薄膜検出を題材とした原理実証にとどまっており、当初計画よりも若干遅れている。一方、当初は予想しなかった新しい成果も得られている。光変調に基づく変調分光システムへの拡張は容易に達成できるため、最終的な目標は十分に達成できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成27年度は、平成26年度までに構築した差動検出法と変調分光法を組み合わせた分光システムを構築し、2THzにわたる周波数帯域において高感度微量検出が可能となることを実証する。その後、当初の予定通り、実用上の諸課題を検討するとともに、実用化に向けた課題と今後のアプローチを明確にする。特に微量物質同定と高コントラスト化学分析イメージングへの展開を検討する。
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Causes of Carryover |
平成25年度に生じた予期せぬ問題を解決するためと当初予期しなかった重要な成果が得られたことによりに、全体的に研究の進展が順次遅れていることが次年度使用額が生じた大きな理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は、予期せぬ問題を解決した差動方式と、当初計画にあった変調分光法とを融合したTHz分光システムを構築する。繰越た予算はここに投資する。
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