2013 Fiscal Year Annual Research Report
垂直磁化細線における磁壁移動型ストレージデバイスの研究
Project/Area Number |
25709029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 輝光 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (20423387)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ストレージデバイス / 垂直磁化細線 / 磁壁 / マイクロマグネティクス |
Research Abstract |
強磁性細線中に形成された磁壁の移動速度および移動中の磁壁構造変化を確認するための実験として,本年度は以下のような研究成果を得た. 先ず,スピン流による磁壁移動実験用の垂直磁化薄膜の材料探索を行った.Au下地層上にCo/Ni人工格子膜が数nmオーダの超薄膜においても良好な垂直磁気異方性を示すことを示し,ナノ構造の磁壁伝播媒体として優れた適性を有することを明らかにした.また,極Kerr効果を利用した磁化検出が可能であり,得られた磁気特性が現状の測定系で検出可能な程度までチューニングできること実験的に明らかにした.さらに,これまでに例のない,絶縁体上にも垂直磁気異方性を有するCo/Ni人工格子膜の作製に成功した.これまではCo/Ni人工格子膜を用いた磁壁伝搬実験は金属下地層上に形成されたものであり,Co/Ni垂直膜に流れる実効的な電流値の推定が困難であった.本研究で得られた絶縁体上のCo/Ni垂直磁化薄膜はこの問題を解決できる画期的な成果である.スピンデバイスとして有望なMnxGa1-x(x=0.4-0.6)垂直薄膜を絶縁体上に400℃以下の比較的低温で作製することにも成功したが,本研究で用いる極Kerr効果測定ではMnGaの回転角が小さいことから磁化状態の光学的検出は困難であることがわかった.2次元のマイクロマグネティックシミュレーションにより,磁壁の伝搬速度の計算を行った.大電流を印加した場合には垂直磁化細線では磁壁伝搬速度が大幅に低下することがわかった. さらに,マクスウェルの方程式を基礎方程式とした有限要素法を用いた電流分布計算結果を取り入れ,3次元的なスピン流分布を考慮した3次元のマイクロマグネティックシミュレータを予定を早めて開発している.主要部分のコードは既に完成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の実施に必須である超薄垂直磁化薄膜の成膜に成功し,利用可能な材料の探索は概ね順調である.絶縁体上に直接垂直磁化薄膜を形成することに成功するなど,研究目的の実現に向けた要素技術が確率された.3次元構造の磁性体に分布するスピン偏極流を考慮した3次元マイクロマグネティックシミュレータの構築に着手し,コードの主要部分の開発を終えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,作製した磁性薄膜を微細加工し,磁壁伝搬実験を行う.極Kerr効果測定により,Co/Ni垂直磁性細線における磁壁伝搬速度の測定を行い,計算機シミュレーションの結果と比較してβ値および室温におけるスピン偏極率を推定する.また,引き続き3次元マイクロマグネティックシミュレータの開発を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度においては,本研究課題で導入した設備備品群による評価実験系の立ち上げ,材料系の探索を最優先し,当初予定していた計算機の購入および外国出張等の予算を縮減したため直接経費次年度使用額が生じている. 次年度には,本格的な試作・評価実験を推進の予定であり,当該助成金の一部を材料経費,微細加工経費および計算機の購入経費として運用し,研究目標の着実な実現に供する予定である.
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Research Products
(36 results)