2014 Fiscal Year Annual Research Report
垂直磁化細線における磁壁移動型ストレージデバイスの研究
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25709029
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 輝光 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (20423387)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ストレージデバイス / 垂直磁化細線 / 磁壁 / マイクロマグネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
強磁性細線中に形成された磁壁の移動速度および移動中の磁壁構造変化を確認するための実験として,本年度は以下のような研究成果を得た. Au下地層上に8 nm厚のCo/Ni人工格子膜を製膜し,その上部に1 nm程度の厚みのCoを製膜することで交換結合複合構造を実現し,逆磁区を形成させるサイト形成に成功した.さらに磁性パターンに電流を流すことで,形成した逆磁区の磁壁を磁性細線部に移動させ,電流印加によるジュール熱の影響ではない電流印加による磁壁の移動を実験的に確認することに成功した.磁性細線に効率的に電流を印加するには,金属の下地層はない方が良いため,本研究では昨年度作成に成功したMgO(111)単結晶基板上へのCo/Ni人工格子薄膜を利用したサンプルの作製に挑戦したが,垂直異方性の発現に関して再現性が著しく低く,現在,より再現性のある製膜条件の探索を行っている. マクスウェルの方程式を基礎方程式とする有限要素法を用いて計算した電流分布を計算に取り入れた3次元的なスピン流を考慮することができる3次元マイクロマグネティックシミュレータの開発に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度始めに本研究の実施に必要なレーザー描画装置が故障し,修理に約2ヶ月を要したため,来年度実施予定であった3次元スピン流分布を考慮した3次元マイクロマグネティックシミュレータの開発を前倒して行い,完成した. 強い垂直異方性を有する薄膜上に比較的軟磁性の薄い薄膜を製膜することで交換結合複合構造の磁性薄膜を作成し,これが逆磁区の核として本磁壁移動実験においても機能することを実験的に示した. 磁壁移動実験では,ジュール熱による磁気余効ではない電流印加による磁壁の移動が確認された.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,作製したサンプルにおいて磁壁移動によるKerr出力変化のダイナミックに測定し,磁壁移動速度の測定を行い,コンピュータシミュレーションと比較してベータ値の推定を試みる.また,電気的に低抵抗なAu下地層上に比較的高抵抗なCo/Niを製膜した場合には磁性体内を流れる電流値が特定しづらいため,垂直磁気異方性の付与に下地層を必要としないCo/Pd薄膜を用いて同様の実験を行い,コンピュータシミュレーションとの比較を行う.
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Causes of Carryover |
本研究課題で導入した設備備品による評価装置の立ち上げ,およびシミュレータの開発を最優先し,当初予定していた計算機の購入および外国出張の予算を縮減したため直接経費次年度使用額が生じている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には本格的な磁壁のダイナミクスの観察および計算機シミュレーションを行うため,当該助成金の一部を材料経費,微細加工費および計算機の購入費用として運用し,研究目標の着実な実現に供する予定である.
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