2013 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的視野から解き明かす四脚動物の多様な歩容の発現機序
Project/Area Number |
25709033
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大脇 大 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (40551908)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 四脚動物 / 歩容 / CPGモデル / 身体特性 |
Research Abstract |
四脚動物は,状況依存的に多様な運動パターン(歩容)を発現するため,生物の多様な振る舞いの発現機序を解明する上で適切なモデル生物である.この機序解明を目指した研究は多数存在するが,それらは単一の歩容や限られた歩容間の遷移のみを議論していた.その結果,個別論的な考察に終始し,多様な歩容の発現発現機序の理解を阻害していた.本研究では,この現状を打破するために全く逆方向のアプローチを採る.すなわち,網羅的な視野から四脚動物が発現する多様な歩容の発現機序の体系的理解を目指す.具体的には,あらゆる歩容を再現可能なロボットを構築することを通して,四脚ロボットの身体構造および制御系の設計論構築を目指す. H25年度は,目標である「あらゆる歩容の再現」のために,身体構造に着目した.制御則は,申請者らが提案した身体特性に応じて歩容生成が可能なCPGモデルを用いた.具体的な身体構造として,(1) 移動速度に応じた背骨の変形を可能とする背骨構造の開発,(2) 高速移動に必要な跳躍運動を生み出すための脚構造の開発を並行して行った.さまざまな身体パラメータを改変し実験するため,脚長,重量分布,弾性特性など容易に変更可能な仕様のロボットを製作した. 実機実験の結果,低速のwalkから,中速のtrot,さらには高速のboundへと,神経的結合パターンを用いなくても移動速度に応じた歩容遷移を再現した.さらに興味深いことに,実際のウマなどにおいて,中速のtrotから高速のboundへの遷移過程に見られるcanterという非対称な3拍子の歩容も再現されている事実が確認された.さらに,実験データを解析した結果,分岐理論により説明しうる力学構造が歩容遷移の背後に内在することが明らかになりつつある.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非対称なRotary gallop, Transverse gallopを除く歩容はすべて再現した.これらの非対称な歩容は,身体特性の非対称性から生成される可能性が示唆されており,H26年度に再現に成功する見込みである. さらに,歩容遷移の背後に内在する力学構造についても,その構造が徐々に明らかになりつつあり,最終年度の歩容発現機序の体系的理解のためにも重要な知見となると期待する.
|
Strategy for Future Research Activity |
H25年度に開発したロボットを基に,再現性が低い歩容などを中心に,前後の脚構造の非対称性などを考慮し機構系の再設計を行う.また,アクチュエータの候補として,空気圧人工筋を導入することも並行して計画する.より動物に類似した筋骨格系を構築するため,様々なアクチュエータを候補として再設計を行う.これらのアプローチで計画通りに進まない場合は,脚間協調のみならず脚内協調制御(脚内の関節間の運動協調)の必要性についても議論する.さらに,単一の歩容の再現のみならず歩容遷移を中心に議論する.前年度までの成果から,あらゆる歩容を再現することで,歩容の全解空間内での歩容を決定するパラメータ(移動速度,身体パラメータ等)が確定している.網羅的視点からすべての歩容を再現したことで初めて,全歩容の解空間の中から(エネルギ的に)最適な歩容が選択される機序の解明が可能となる.運動学データのみならず動力学的データも併せて計測し,提案する制御則と再現された歩容および歩容遷移に内在する力学構造について解析する.これらのデータは,最終年度の歩容発現機序の体系的理解のためにも重要なデータとなる.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究にて開発する四脚ロボットの実機開発および実機実験に関して,当初の計画よりも迅速に研究が進んだため,実機開発に使用する消耗品費の一部を次年度に繰り越した. H26年度以降において,より再現性の高い実機開発のための消耗品費として使用するとともに,四脚動物の歩容生成機序の統一的理解に向けたより精緻なデータ計測のための,ハイスピードカメラの追加導入および床反力センサなどの各種センサの導入など,物品費として使用する計画である.
|