2013 Fiscal Year Annual Research Report
地域住民の包括的な生活保障におけるモビリティと生活支援サービスの連携に関する研究
Project/Area Number |
25709043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
吉田 樹 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (60457819)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | モビリティ / 生活支援サービス / 路線バス / 運賃低廉化 / 需要の価格弾力性 |
Research Abstract |
地域公共交通の衰退や店舗等の撤退により、食料品や日用品、医療サービスなどの調達が困難になった地域や市民への施策が課題になっている。個人による物やサービスの調達方法は多様であるが、活動を持続的に保障するためには、モビリティの確保と、宅配や在宅医療サービスなどの生活支援サービスとを一体に捉え、双方の連携や補完の可能性を明らかにすることが有効である。研究初年となる平成25年度は、市民生活を営むうえで欠かせない諸活動のうち、とりわけ買物行動に着目して、調達方法の違いによる活動の達成可能性について考察を試みた。具体的には、路線バス運賃の低廉化施策を行っている青森県八戸市を中心とした地域(八戸圏域定住自立圏)を対象に、居住者の外出機会や生活支援サービスの利用に関する変化を数量化II類分析によるモデリングを行った。その結果、日用品の買物に関して、生活支援サービスの方が外出と比較して利用可能性の高い属性ほど、運賃低廉化によるバス利用の増進や外出環境の改善を感じており、モビリティのLOS(Level of Service)向上と生活支援サービスの提供との間には、代替/補完関係が存在することが示された。加えて、路線バスの運賃が低廉化することによる買物交通の変化について、需要の運賃弾力性と同行者や目的地、頻度の変化からそれぞれ捉えた。 また、本研究課題で対象とする、東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故の被災地における生活活動の観測と、モビリティと生活支援サービスの代替/補完可能性に関する調査は、研究期間と従前地への帰還可能性を考慮して、福島県南相馬市内を対象に実施することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モビリティのLOS(Level of Service)向上による活動の達成可能性について、とりわけ買物行動に着目し、その定量的な評価を行うとともに、生活支援サービスとの代替/補完性の存在を明らかにすることができた。そのため、初年度の達成度としては、概ね順調であると判断した。 なお、当初の研究計画では、東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故による移住(防災集団移転、いわゆる「仮の町」への一時的転居等)を余儀なくされた地域を対象に、予備調査(ヒアリング調査等)を実施する予定で予算計上を行っていた。しかし、上記に係る行政の政策決定に遅れが見られたことから、予備調査の実施は平成26年度とした。しかし、調査適地の選定は平成25年度中に済んでおり、実施準備も順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、前年度に、八戸圏域定住自立圏を対象として検討した活動の達成可能性評価について、インベントリ化を試みる。また、インベントリを踏まえた調査票を設計し、震災・原発事故により多くの市民が避難生活を余儀なくされている、福島県南相馬市を事例として、①自宅居住者、②在宅避難者、③市内仮設住宅避難者、④双葉郡各町村からの避難者について、生活活動にどのような差が見られるかを示すとともに、生活支援サービスの利用実態を明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の当初研究計画では、東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故による移住(防災集団移転、いわゆる「仮の町」への転居など)を余儀なくされた地域を対象とした予備調査(ヒアリング調査等)を実施する予定で予算計上を行っていた。しかし、上記に係る行政の政策決定に遅れが見られたことから、調査適地の選定に時間を要したことが次年度使用額が発生した要因である。 上記の理由に係る調査適地の選定については、平成25年度末に福島県南相馬市で行うことを決定しており、平成26年度の早い段階で実施する計画である。そのため、前年度使用予定の残額は、当該調査の実施に関わる費用(調査票印刷費、調査員および入力等に関わる人件費もしくは委託料)に充当されることになる。また、平成26年度分として請求した研究費については、予備調査の後に実施されるアンケート調査の費用(印刷経費のほか郵送費を含む)として充当する計画である。
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