2014 Fiscal Year Annual Research Report
高性能スピンデバイスのためのねじれ磁気構造材料の創製
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25709056
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
関 剛斎 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (40579611)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 磁気構造制御 / スピンデバイス / 磁化ダイナミクス / ナノ構造 / 積層制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、空間的にねじれた磁気構造を微小領域において精密に制御することで、スピンデバイスの高性能化に資するねじれ磁気構造材料の創製を行うことを主目的とし、異種磁性金属の積層化、微小磁性体におけるねじれ磁気構造および磁化ダイナミクスの解明と制御、変調スピン流による磁化反転、高周波スピントルク発振、さらに巨大スピン起電力の発生を目指して研究を遂行している。平成26年度は、前年度までに本事業において確立した異種磁性金属積層試料の成膜手法を用いて、「電気的および光学的手法を用いた磁化ダイナミクスの検出」を前年度から引き続き行うとともに、「スピン波モードに起因した変調スピン流、スピントルク発振およびスピン起電力」の観測を目指し、以下の研究内容を遂行した。 1、ナノサイズ素子における磁化ダイナミクスの検出:ハード磁性材料であるFePt合金とソフト磁性材料であるパーマロイ合金層を積層化させた薄膜試料に対し微細加工を施し、ナノサイズの柱状素子構造を作製した。磁化曲線を解析することで、ナノサイズ素子における磁気構造の解明に成功した。さらに、ナノ構造素子における磁化ダイナミクスをネットワークアナライザ強磁性共鳴法により評価した。その結果、複数の共鳴ピークが観測され、マイクロマグネティクス計算と比較を行うことで、定在波のスピン波モードに加え、磁気渦構造の運動に起因した共鳴モードが出現することが明らかとなった。 2、スピン波を利用した磁化反転技術の系統的評価:スピン波励起下での反転磁場を系統的に評価した結果、従来よりも磁化反転の確率を向上できることが明らかとなり、またその起源がスピン波の共鳴現象に基づくものであることを実証した。 3、スピン波に起因したスピン起電力:上記した柱状素子構造において、スピン波を励起しながら素子端の電圧を測定したところ、スピン波励起に起因した起電力の観測に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究遂行により、ナノサイズ素子における磁化ダイナミクスの検出とその機構解明に成功し、さらにスピン波を利用した磁化反転技術の優位性を実証した。また、スピン波ダイナミクスに起因する起電力の観測にも成功している。当初計画では、平成26年度以降「電気的および光学的手法を用いた磁化ダイナミクスの検出」および「スピン波モードに起因した変調スピン流、スピントルク発振およびスピン起電力の評価に着手」を予定していたことから、今年度の研究実施内容は計画を概ね達成するものであり、研究は順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究遂行により得られた成果をもとに、平成27年度は「スピン波モードに起因した変調スピン流、スピントルク発振およびスピン起電力の評価」に関し引き続き研究を遂行していく。電気的測定の結果を薄膜成長条件や積層構造、さらに素子作製プロセスへとフィードバックさせ、各々の効果をより大きくするために、ねじれ磁気構造材料の最適化を行う。最終的には、スピントルク磁化反転電流密度を大幅低減し、高周波帯域でのスピン波モードに起因するスピントルク発振の実現、および巨大スピン起電力を発生できるねじれ磁気構造材料の開発を行う。
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