2013 Fiscal Year Annual Research Report
鉄系超伝導体の高品質薄膜成長機構の解明と高性能化技術の創製
Project/Area Number |
25709058
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
平松 秀典 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 准教授 (80598136)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | パルスレーザー堆積法 / エピタキシャル成長 / 超伝導 / 磁束ピニング / 臨界電流 |
Research Abstract |
4種類のパルスレーザー励起波長(193, 248, 532, 1064 nm)を採用したパルスレーザー堆積法を用いて、鉄系超伝導体BaFe2A2:Coの高品質薄膜が得られる条件を検討した。 まず、各レーザー波長 - パルスエネルギー - 薄膜成長速度の関係を調査したところ、レーザーの波長が長くなる(= 光子エネルギーが小さくなる)に伴って、同じパルスエネルギーを照射した場合の成長速度が速くなることがわかった。そして、X線回折のout-of-planeおよびin-planeのロッキングカーブ測定から、各レーザー波長における最適なパルスエネルギーを評価したところ、そのパルスエネルギーはレーザー波長が短くなるに伴って大きくなることが明らかとなった。 以上の結果と、各レーザーにおける光学定数を考慮したところ、レーザーの波長が異なった場合であっても、最適な成長速度はすべて同じ0.3nm/secでほぼ一定であることが明らかとなった。すなわち、成長レートが最適であることがもっとも重要であった。それでは、なぜ他の研究グループがこのような結果に至っていないのかを考えてみると、短い波長(たとえば248nm)のパルスレーザーを用いた場合に本研究ほどのパルスエネルギーを入れられるセットアップになっていないことと、薄膜成長時の基板-ターゲット間距離は、本研究は鉄系超伝導体に最適なように30mmにしてあるのに対して、50mm前後としているグループが多いことが原因である可能性があるのではないかと考えられた。 以上で見いだした各波長における最適パルスエネルギーで成長させた鉄系超伝導体BaFe2A2:Co薄膜は、励起波長に依存することなく、どの試料においても自己磁場中で1MA/cm2を越える性能を示し、確かに成長速度の最適化が最も重要なファクターであることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であったエピタキシャル成長機構の解明にまで到達した。現在得られた結果に関する論文を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
・H25年度において得られた知見から、鉄系超伝導体の高品質化に本当に有効な励起波長、およびそれに適したそのほかの成長条件(例えば、ターゲット組成と合成方法、成長温度、成長速度、成長雰囲気)を見いだし、新技術として確立する。 ・磁束ピン止め中心となる新材料探索とそれを利用した高臨界電流密度の達成 トライアンドエラーになりがちな新材料探索に対して、以下の探索指針を立てて、磁束ピン止め中心となる新材料を探索し、発見する。
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