2015 Fiscal Year Annual Research Report
鉄系超伝導体の高品質薄膜成長機構の解明と高性能化技術の創製
Project/Area Number |
25709058
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
平松 秀典 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 准教授 (80598136)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | パルスレーザー堆積法 / エピタキシャル成長 / 超伝導 / 磁束ピニング / 臨界電流 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度末までに、4種類のパルスレーザー励起波長を採用したパルスレーザー堆積法を用いて、鉄系超伝導体BaFe2A2:Coの高品質薄膜が得られる条件を検討した。そして、レーザーの波長が異なった場合であっても、最適な成長速度はすべて同じ0.3nm/secでほぼ一定であることが明らかとなった。この得知見をもとに、さらに高い臨界温度が期待できるP添加BaFe2As2に対してその最適プロセスを適用し、さらなる高性能化を目指した。そして、このP添加系では、これまでよりも遙かに高い成長温度が必要であることを見いだし、その実現のためのシステムの立ち上げから行った。そして、高い磁場中(9T)では鉄系超伝導体では最高の1MA/cm2を越える性能を示す薄膜の作製に成功した。さらに、その臨界電流密度(Jc)特性の磁場中の異方性を調査したところ、膜の成長方向(c軸方向)に沿った効果的な磁束ピン止め中心が自然に成長していることがわかり、応用上重要となる等方的な特性を有することを明らかにした。そして、本研究課題の目標値である臨界電流密度10MA/cm2にほぼ匹敵する7MA/cm2にまでの高性能化に成功した。そこで、膜成長する基板をMgOからLSATに変更してその効果を検討したところ、LSAT基板上に製膜したP添加BaFe2As2は、MgO基板上の膜に比べて悪い結晶性 (Δω = 1.1度, Δφ; = 1.5度) を示した。走査型透過電子顕微鏡による断面観察から、この起源は、LSAT-膜界面における反応層の形成によって生じる多数のドメイン境界によるものと結論付けた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの目標であったエピタキシャル成長機構の解明、および磁束ピン止め中心の効果的な導入にまで達した。さらに、本研究課題の最終目標値である臨界電流密度10MA/cm2にほぼ匹敵する7MA/cm2にまでの高性能化に成功し、数ある単結晶基板の中でもMgOが最適であることを見いだした。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに取り組んだ技術開発と最適ピン止め中心の探索を融合し、薄膜成長条件、ピン止め中心濃度の最適化を行いながら、結果を薄膜成長条件へとフィードバックし、最終的に既存材料の最大臨界電流密度(10 MA/cm2)を越える臨界電流密度の達成を目指す。
|
Research Products
(8 results)