2013 Fiscal Year Annual Research Report
酸素透過セラミックスにおけるイオンと電子のインタープレイ
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25709059
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
中山 将伸 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10401530)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イオン伝導体 |
Research Abstract |
コバルトを含有するペロブスカイト型酸化物として、(La,Sr)[Co,Fe]O3, (Ba,Sr)[Co,Fe]O3, (Gd,Ba)[Co]O3を選定した。(以下、それぞれLSCF, BSCF, GBCOと略す)化学式中()および[]内は、ペロブスカイトのAおよびBサイトをそれぞれ占有する元素を示す。これらの材料の酸化物イオンと空孔の配置関係、およびイオン伝導性について注目し、マルチスケール計算シミュレーションにより検討を行った。 各構造における酸素と空孔の配列自由度は非常に大きな数値となるため、正確なイオン導電性シミュレーションを行うためには、数千以上の大きな粒子数から構成される系が必要となる。このような計算系ではモンテカルロ法(MC法)や、分子動力学法(MD法)が有効であるが、一般的には実験値を参照して経験パラメーターを決定する過程を含むため、実験と計算を各々独立的に議論することが難しい。そこで、高精度第一原理計算を用いてMC法やMD法に必要なパラメーターを抽出し、実験結果から独立した手段で分子シミュレーションを行った。その結果、酸素と空孔の相互作用に由来する相転移現象や、カチオン整列に由来する酸化物イオン導電性の変化を明らかにすることができた。 実験的には主にBSCFとLSCFに注目して材料の合成実験を行った。この材料では、大気中での二酸化炭素との反応によって炭酸化が進行するため、次年度以降のイオン導電性測定や電子構造解析実験などで精密な実験測定が困難になることが判明した。そこで、二酸化炭素との反応性を温度および時間に対してTG測定と第一原理計算を組み合わせて決定した。これにより、組成および測定温度域を調整することで今後の実験を実施する見通しを得ることができた。 以上の得られた成果については適宜学術論文や学会等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一原理計算については、三つ材料系を第一原理計算、MC法・MD法に適用し、その計算妥当性を別個に評価することができた。これらの成果は学術論文としてPCCP誌等に報告することができた。特に、第一原理計算の結果から、MC法のパラメーターを導出する方法として、多変量解析によるフィッティングを行うことで、精度と汎用性を両立したパラメーター取得の方法論を確立することができた。 一方で、実験的には本研究でターゲットとしたペロブスカイト型酸化物の二酸化炭素耐性が低いことから、二酸化炭素との反応条件抽出を追加で実施した。この結果、Aサイトカチオンの組成調整などで、今後の実験に差し支えない程度に実験が継続できることが分かった。以上から、実験では追加実験を行う必要が発生したが、それ以外については順調に研究は当初計画どおり進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに確立した多変量解析を用いた計算手法によりペロブスカイト系における電子とイオン間の相互作用の抽出を実施する。この結果を踏まえて、MC法により局在電子およびイオン・空孔の配列関係を明らかにする。また、局在電子とイオンの混合伝導についても考慮できるキネティックモンテカルロ法のコード作成を引き続き行う。 更に局在電子の状態を確定するために合成したサンプルの電子構造解析を電子顕微鏡磁化率測定を中心に実施する。あわせて、前年度に新たに課題となった二酸化炭素との反応性については、実用材料として産業界からの興味も大きいため、引き続き反応速度の定量化を実施し論文等による公表を目指す。
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