2013 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物の微視的欠陥制御による高プロトン伝導性材料の設計
Project/Area Number |
25709072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
奥山 勇治 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 特任助教 (80613281)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プロトン伝導体 / プロトン溶解 / 電気伝導度 / 異種元素置換 |
Research Abstract |
本研究では酸化物プロトン伝導体の局所構造変化が与えるプロトン溶解及びプロトン伝導度への影響を調べるために異種元素置換が与える効果を検討した。具体的にはSrをドープしたLaMO3系ペロブスカイトのMサイトをAl, Sc, In, Yb, Yのイオン半径が大きくなる順で3価のカチオンを変化させた際のプロトン溶解量を熱重量分析により調べた。その結果、Al<Yb=Y<Sc<Inの順でプロトン濃度が大きくなる傾向が見られ、LaMO3系のペロブスカイトにおいてはMサイトがInの際に最もプロトン溶解に適した構造を取ることがわかった。しかしながらプロトンの最大溶解量はドーパントであるSrの濃度に達することはなかった。さらに最大プロトン溶解量がドーパント濃度の約1/10であるSrをドープしたLaYbO3のYbを同価数のInで一部置換するとInの置換量の増加と共にプロトン溶解量が増加することを確認した。価数は同価数でありInの置換に伴い酸化物イオン空孔は増加していないがプロトン溶解量は増大していることからプロトン溶解には最適な局所構造が存在することが推測できる。また、Mサイトへの異種元素置換によってプロトン溶解反応の標準自由エネルギー変化が大きく変わることが明らかになった。具体的にはInの置換と共に最大溶解量は増加する一方でプロトン溶解反応の標準自由エネルギー変化は増加してしまうことがわかった。 プロトン伝導度においても異種元素置換が与える影響はプロトン溶解量と同様の傾向が見られた。また、導電率とプロトン濃度よりプロトン移動度(プロトン拡散係数)を見積もった結果、異種元素置換によって僅かに移動度は減少することがわかった。これはプロトンとドーパントの会合欠陥の増加もしくは結合エネルギーの増加が予想されるが更なる今後の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は研究計画に従って研究が遂行できた。一部、局所構造を実験的に捉えるために計画していたラマン分光による局所構造の検討でラマン分光により異種元素置換に伴う局所構造変化を観測することができたが詳細な帰属に至らなかったため上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従って次年度は酸化物への金属分散による局所応力負荷を与えることでのプロトン溶解及び伝導度への影響を調べると共に合成による微視的構造制御を行い高いプロトン濃度を有する材料調製を行う。また、初年度に行ったラマン分光分析の結果を基に局所構造変化に関する詳細な解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度では所属研究施設の備品(デジタルボルトメーター、インピーダンスアナライザー、電気化学測定装置など)を利用して本研究を遂行することができたため次年度使用額が生じた。 次年度使用額分の予算は次年度の局所構造制御用の合成装置や電気化学評価装置の改良の予算として計上する。
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