2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25709080
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
白石 充典 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00380527)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生物機能工学 / 蛋白質工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では本質的に調製が困難であるGPCRについて、分子進化工学的手法および出芽酵母のシグナル伝達系を利用することで、本来の機能を保持しかつ安定性と発現量を高めた改変体を創出するシステムの構築を行う。さらに構造解析および相互作用解析に利用できる安定な受容体蛋白質の大量調製技術の確立を目的とする。 本年度はまず安定化ヒトGPCR変異体のスクリーニングに用いる新規酵母株の作製を行った。新規酵母株については、酵母ゲノム中のGPA1遺伝子を、ヒトG蛋白質とのキメラ遺伝子へ置換することを試みたが、うまくいかなかった。そこで海外のグループより入手した酵母株を用い、スクリーニング系の構築を進めることにした。GPCR_Aについて、細胞内第3ループを削除した改変体に対してランダム変異を導入し、GPCR_Aと共役するキメラG蛋白質を有する酵母株に形質転換し、アゴニスト含有選択プレート培地で選択したところ、アゴニストに比較的低濃度で反応する7種類の独立した変異体を取得した。これらの変異体を発現した酵母株を破砕し、物性を蛍光ゲル濾過(FSEC)で評価したところ、プロテアーゼによると考えられるC末端の分解が確認されたが、受容体のピークも確認できた。 またGPCR_Aについて、昨年度報告した改変体は、1回の精製で0.5mgの精製蛋白質を得ることが出来たが、リガンドの親和性が100分の1程度に低下していた。しかし今年度はさらに改変体の作製・評価を進めることで、リガンド結合活性が文献値に近い改変体の作製に成功した。また発現宿主をS. cerevisiaeに変え、培養条件も最適化することで、1回の精製で1mg以上の受容体を調製できる発現、精製システムを構築することができた。現在、精製条件を検討しながら、キュービック相結晶化法(LCP法)による結晶化を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では平成25年度~26年度にかけて、(1)性フェロモン受容体STE2遺伝子の破壊、(2)細胞周期停止に関わるFAR1遺伝子の破壊、(3)FUS1プロモーター下流へのHIS3遺伝子の導入、(4)酵母の三量体G蛋白質Gpa1のC末端をヒトのGαに置換したキメラ遺伝子の導入、(5)液胞プロテアーゼPEP4遺伝子の破壊、これら5つの遺伝子改変を施した新規酵母株の作製を行う計画であった。(1)~(3)までは進めることができたが、(4)が困難であった。しかしながら、海外の研究グループよりGpa1とヒトGs、Gq、Gi/oのキメラG蛋白質を有する酵母株を入手することができ、これを用いてスクリーニングに用いる酵母株の作製を進めることができている。新規酵母株の作製の点ではやや遅れているが、ランダム変異導入とリガンド含有選択培地を用いた受容体のスクリーニング系の構築もできている。 また本研究では、構造解析や相互作用解析、あるいは抗体作製に利用可能な受容体を調製することを目標としている。そのためには受容体の大量発現系の構築や、精製方法の確立も重要である。今年度作製した改変体は、昨年度に作製したものとは異なり、リガンド親和性がほぼ低下することなく、また最終的な精製量も2倍以上向上している。これにより精製条件の検討とLCP法による受容体の結晶化を進めることができている。このように受容体蛋白質の大量調製法については、昨年度から大きく進歩したと思われる。よって総合的にみると、本研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のスクリーニングシステムに用いる独自の酵母株の作製を継続する。GPCR発現時の分解を抑えるため、現在これらの酵母株について、主要プロテアーゼであるPEP4遺伝子を破壊した新規酵母株を作製している。GPCR_Aは細胞内ループに融合タンパク質を導入しないと、不安定で発現が低い。GPCR_Aにランダム変異を導入し、本システムでのスクリーニングを精力的に進める。このために来年度よりこのルーチンワークのための実験補助員を1人雇用する予定である。また本研究においては、受容体蛋白質の大量調製系の確立も重要なテーマの一つである。酵母(サッカロマイセス、Pichia酵母)を用いた培養条件(発現プラスミドの選択も含む)の検討、精製条件の最適化も進めていく。GPCR_Aについては、現在結晶化を試みている。もし現在の発現、精製方法で良好な結晶が得られないような場合は、発現系の変更(昆虫細胞)、精製条件の検討(界面活性剤など)を行う。 また、受容体にランダム変異導入を行い、機能変換した受容体の取得(例えばGiとカップリングする受容体をGsとカップリングするように変換したり、アンタゴニストで活性化するような受容体に変換するなど)をおこなうことで、GPCRの機能の本質を明らかにしていくことも興味深いと考えている。
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Causes of Carryover |
実験機器類、試薬、消耗品が当初計画よりも安価に購入できたことが理由として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究を加速させるための試薬・実験器具の購入にあてる予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Proteoliposome-based selection of a recombinant antibody fragment against the human M2 muscarinic acetylcholine receptor.2014
Author(s)
Suharni, Nomura Y, Arakawa T, Hino T, Abe H, Nakada-Nakura Y, Sato Y, Iwanari H, Shiroishi M, Asada H, Shimamura T, Murata T, Kobayashi T, Hamakubo T, Iwata S, Nomura N.
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Journal Title
Monoclon Antib Immunodiagn Immunother.
Volume: 33
Pages: 378-85
DOI
Peer Reviewed
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