2015 Fiscal Year Annual Research Report
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25709081
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 陽 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, ユニットリーダー (40532271)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電気魚 / ATP / コンデンサ / 発電機 / 神経系 / 組織工学 / 流体工学 / 導電布 |
Outline of Annual Research Achievements |
火力や原子力等の既存の方法に代わる、クリーンで安全かつエネルギー効率の高い発電機の開発は急務である。そこで近年、生物機能に着目し、酸化還元酵素を利用したグルコースのみで発電するバイオ燃料電池が開発されているが、従来の発電法に比べて出力性能に劣る。一方、本提案では、強力な電気を発生する器官を有する電気魚に着目し、その生体特有の高機能な構造を直接組み込んだ高機能なATP発電機を実現することを着想した。そのためには、シビレエイの発電機構のデバイスへの集積化が必須である。以上をふまえ、本研究の目的は、ナノ・マイクロ加工技術を用いて集積化したシビレエイ発電機構をベースとした発電機の創成とした。 当該年度は、これまでに達成した、シビレエイ個体から取り出した発電器官に直接神経伝達物質の一種であるアセチルコリン溶液を注入することで化学的な手法で人為的に発電させる手法をベースとして、これをデバイスに組み込んだ発電機プロトタイプ作製に取り組んだ。上記の発電手法は、実際には、発電自体はできるがサイズが一定でなく、またシリンジ針を電気器官に直接打ち込んでいるため針の本数に限界があるため、電圧・電流とバックグランドが安定しない。これらを安定させるには一定のサイズのデバイスに電気器官を組み込むことが必須である。これをアルミやシリコンゴムで実際に作製し、発生電力の安定化ならびに直列による電圧増強、並列による電流増強を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、シビレエイの電気器官への化学刺激による発電をベースとしたデバイス化を達成し、その性能や制御性も十分に得られたことから、当初の目標通りの進展がみられたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、デバイスの性能・安定性評価へと移行する。まずは発電器官の繰り返し使用による発電特性変化の計測、保存時間による性能変化の把握、サイズや針の本数を変えた場合の性能評価といった基本的な項目について検証実験を行う。また、デバイスで何らかの外部仕事をさせるために電気回路を用いた電力の貯蓄可能性についても検証する。また、これまでの主な研究成果を学術誌論文にまとめ、発表する。
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Causes of Carryover |
当該年度は、デバイス化を検討する上で、電気的なバックグラウンドや送液システムなどにおいて、システムを安定させるために試行錯誤した部分が大きく、性能の検証自体は翌年度に先送りせざるを得なかったため、研究費の未使用分が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用分3,208,261円は、システム性能評価用の物品費としてシビレエイ他、試薬や実験器具などの消耗品として1,000,000円、学会参加や打ち合わせ等のための旅費として200,000円、実験員等の人件費として2,000,000円、学会登録費などその他として8,261円を計画している。
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Research Products
(9 results)