2013 Fiscal Year Annual Research Report
レーザアブレーションプラズマを用いた自然水の現場成分分析手法に関する研究
Project/Area Number |
25709084
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
ソーントン ブレア 東京大学, 生産技術研究所, 特任准教授 (60526789)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | レーザ誘起破壊分光法 / 自然水 / 液体の化学分析 / 元素分析 / プラズマ / 海洋調査 / 資源調査 / 環境調査 |
Research Abstract |
レーザアブレーションプラズマを用いた自然水の現場成分分析の高精度化、高感度化を図る事が本研究の目的である。ベースとなるプラズマ分光では、3000mの高圧下において、液体に含まれている複数元素を100ppbの感度、20%程の精度でその場分析する事が可能である。今年度は、分光するプラズマを生成するレーザの照射方法、また得られるスペクトルの解析手法による計測の高精度化、高感度化ついて検討した。 レーザ照射に関して、従来の<10nsパルスによる計測と、150nsのロングパルスを用いた計測実験を実施した。スペクトル分析と合わせて高速カメラによるプラズマイメージングを3000mまでの高圧下でおこなった。すべての計測した圧力条件で、同じパルスのエネルギーでは150nsのロングパルスを用いた方が、従来の<10nsより効率的にプラズマが発光することを実証し、さらに、得られるスペクトルピークの幅が細いため、より理想的な元素発光が観測できることを示した[1]。スペクトルデータの解析に関して、ロングパルスを使う事によって励起されやすくなる複数のピークを、統合的に解析する事によって、元素あたり一つのピークのみを使う場合より、定量的に解析できる濃度範囲が広い新たな分析手法を研究開発した。2013年12月には、3000mで適応可能な現場型ロングパルスレーザを用いたプラズマ分析装置を用いて、1000m以上の深度で現場計測データを取得することに成功した。開発した分析手法を用いて、実海域のデータを解析中である。 これらの研究内容と合わせて、より高感度な計測を目的とした電気分解による計測領域の濃縮手法の検討を行った。来年度は、引き続き電気分解濃縮実験を行い、さらに時間分解計測を有するプラズマ分光計測を行うことによって、より高精度・高感度な現場分析が実現できるか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
レーザ照射方法について、研究は順調に進んでいる。従来手法と定量的な比較をおこなうことができ、以下のPeer review Journalに成果が刊行される(現在in press)。本目的に関しては、当初計画していた通りである。 ・Blair Thornton, Tetsuo Sakka, Tatsuya Masamura, Ayaka Tamura, Tomoko Takahashi, Ayumu Matsumoto, ‘Long-Duration Nanosecond Single Pulse Lasers for Observation of Spectra from Bulk Liquids at High Hydrostatic Pressures’, Spectrochimica Acta Part B, (2014) in press スペクトルデータの解析手法に関しては、おおむね計画通りである。当初計画していた複数のピークを解析することによって、計測できる濃度範囲を広げることができ、感度と計測精度の向上が実現できていることは実証した。従来手法との定量的な比較は現在行っているところで、比較結果がまとまるのは来年度中となる。当初の計画されていなかった、ロングパルスレーザを用いた実海域試験を行うことができ、1000m以上の深海において、順調にデータを取得する事に成功し、現在データは解析中である。また、来年度計画していた電気分解濃縮の基礎実験が実施できており、これらの2点に間しては当初計画以上に進展している。現場計測データが取得できていることと、来年度の研究項目の検討が進められているため、総合的には当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、当初の計画通りに、電気分解濃縮によるプラズマ計測の高感度化の研究を行う予定である。また、今年度の研究で分光分析とプラズマのイメージングを同時に行うことに成功し、これによって同じレーザ照射の条件でも、プラズマが発生するタイミングが100ns程度前後することが分かった。従来の計測では統計的に最適化されたタイミングでプラズマを観測していたため、一つ一つのプラズマが発生するタイミングが前後する事は計測の精度に影響することが考えられる。このため、来年度はプラズマ発光を、100ns程度の時間分解で計測する検出器の研究開発を行う。これによって、後処理で一つ一つのプラズマの信号を最適化できるため、計測の精度及び感度の向上が期待されている。これらと平行して、引き続き新たに開発したスペクトルデータの解析手法の、従来の解析手法との比較を実施し、さらに時間分解計測・電気分解で濃縮した液体領域の計測に本手法を適応する予定である。
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