2013 Fiscal Year Annual Research Report
土壌中トリチウム移行モデルの構築と汚染拡大防止策の効果実証
Project/Area Number |
25709087
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片山 一成 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (90380708)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | トリチウム / 土壌 / 汚染 / 同位体交換 |
Research Abstract |
核融合炉の実現にむけて社会の理解を得るためには、その恩恵や安全対策だけでなく最悪の異常事象によって、公衆・環境がどれほどの影響を受けるのか、科学的根拠に基づいて誠実に説明していく必要がある。本研究では、未だ確立されていない土壌中でのトリチウム移行モデルの構築を目的としている。 初年度は、九州大学箱崎キャンパス内6か所の土壌を採取し、土性分析(含水比、土密度、比表面積、粒度分布、X線分析など)及びトリチウム透水実験を実施した。土壌試料は、未舗装歩道や林、グラウンドから採取したが、含水比は比表面積に応じて増加しており、採取場所による違いは見られなかった。土密度は6試料とも一般的な土密度の範囲内であることが確認された。 九州大学工学部RI実験室にグローブボックスを設置し、ボックス内にて土壌充填カラムへのトリチウム透水実験を行った。カラムからの排水量とトリチウム濃度の経時変化を測定した。排水速度をDarcy則にて解析したところ、透水係数はCreagerの推算値に近い値が得られた。水の透水速度については、Creagerらの推算式が適用できることが確認された。水・トリチウムバランスから、供給量に対する土壌保持量の割合は、6試料とも水よりトリチウムの方が大きく、供給したトリチウム水が単に空隙等に保持されるだけでなく、土壌粒子が含有する水素との同位体交換反応によってもトリチウムが保持されることを明らかにした。このことは、土壌中でのトリチウム水移行を予測するには、水の移行モデルだけでは不十分であり、土壌粒子・粘土鉱物における水素同位体交換反応を考慮しなければならないことを意味する。なお、トリチウム透水実験後の土壌に対するトリチウム回収実験も開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、主な土性分析とトリチウム透水実験を実施した。当初予測では、トリチウム透水実験において、トリチウムは土壌粒子表面に保持されるものと考え、トリチウム透水実験後の土壌充填カラムに水を流通させることで、トリチウムが速やかに回収されると考えていた。しかしながら、保持されたトリチウムは、流水では回収されず、その後の長期間にわたる水への浸漬でも放出されなかった。そこで、当初計画にはなかったが、土壌からのトリチウム回収実験装置を作成し、300℃加熱によって保持されたトリチウムの一部が放出されることを確認した。トリチウム実験を優先したこともあり、土性分析のうち、有機物含有量については未達であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
土壌への捕捉されたトリチウムの放出挙動を詳しく調査し、その結果に基づいてトリチウム捕捉・放出モデルを提案する。土壌中に含まれる粘土鉱物がトリチウム移行に強く影響していると考えられるため、代表的な粘土鉱物を試料とした実験も開始する。有機物含有量とトリチウム捕捉量の関係性についても調査する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
トリチウム実験を優先し、土性分析項目のうち有機物含有量の測定は、次年度に実施することに変更したため、有機物量測定に関する次年度使用額が生じた。 土壌試料中の有機物含有量を計測するため、固体燃焼装置を製作する。また、H25年度のトリチウム実験により、土壌粒子における水分の捕捉・放出挙動がトリチウム移行に強く寄与することが示唆されたため、水分計を購入する。
|