2014 Fiscal Year Annual Research Report
土壌中トリチウム移行モデルの構築と汚染拡大防止策の効果実証
Project/Area Number |
25709087
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片山 一成 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (90380708)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | トリチウム / 土壌 / 汚染 / 同位体交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
核融合炉の実現にむけて社会の理解を得るためには、その恩恵や安全対策だけでなく最悪の異常事象によって、公衆・環境がどれほどの影響を受けるのか、科学的根拠に基づいて誠実に説明していく必要がある。本研究では、未だ確立されていない土壌中でのトリチウム移行モデルの構築を目的とする。 H25年度は、九州大学箱崎キャンパス内6か所の土壌を採取し、土性分析とトリチウム水透水実験を実施し、吸着・吸収・同位体交換反応により土壌粒子にトリチウムが捕捉されることを定量的に明らかにした。H26年度は土壌粒子に捕捉されたトリチウムの放出挙動に注目した実験を実施した。土壌粒子は、吸着水・層間水・構造水といった水を保持しており、トリチウム放出とこれらの水の放出とを関連付けて考察するため、水分計を購入して水蒸気放出挙動も調べた。 トリチウム水を透水させた土壌充填層に蒸留水を透水させたところ、充填層内に捕捉されたトリチウムの40%~96%が流出した。水パージにより残留トリチウムの大部分が排出されるものの、排出率は土壌によって大きく異なることが示された。透水によって残留トリチウムの90%が回収された土壌試料についてはさらに詳しく調査した。蒸留水に浸漬した場合、トリチウムの放出が緩やかに進行するものの、その速度は遅く、およそ200日の浸漬でも推定残留量に対する放出量はごく僅かであった。アルゴン気流中で1000℃まで加熱することにより推定残留量の4%は放出されたものの、大部分は土壌粒子中に残留することが示された。トリチウムバランスによる推定残留量についても検証が必要であると考えており、次年度、トリチウム捕捉・放出実験の再現実験と、土壌粒子の完全分解等によるトリチウム残留量評価法を検討する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、土壌粒子に捕捉されたトリチウムの放出挙動についての実験を実施し、蒸留水浸漬、不活性ガス雰囲気加熱によるトリチウム放出速度が定量された。九州大学キャンパス移転事業により、トリチウム実験室の移転が行われたことからトリチウムを用いた実験が当初計画よりもやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
トリチウム挙動を追跡するうえで、土壌粒子内のトリチウム残留の有無を評価することが極めて重要となっている。そこで次年度は、土壌粒子の完全分解によるトリチウム残留量評価法の確立に取り組む。 これまでの実験結果を整理し、トリチウム挙動計算コードの開発に着手する。
|
Causes of Carryover |
九州大学キャンパス移転事業により、H26年度にトリチウム実験室の移転作業が行われた。そのため、トリチウム実験が当初計画より遅れ気味となり、実験消耗品に関する次年度使用額が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
新キャンパスでのトリチウム実験室を早期に立ち上げて、トリチウム実験を加速して実施する。
|