2016 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期依存的なコヒーシン一分子ダイナミクスの解析
Project/Area Number |
25711002
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西山 朋子 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90615535)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 姉妹染色分体間接着 / コヒーシン / 単分子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
コヒーシン複合体は、そのDNAとの結合性が細胞周期の進行に伴って多段階に変化し、それぞれが接着の確立や解除といったステップと密接に関わっている。しかしながらコヒーシンはこれまで、分子集団として観察・解析がなされており、コヒーシン一分子のDNA上での挙動は明らかになっていなかった。本研究では、DNA上のコヒーシンを一分子レベルで観察する系を確立し、その細胞周期の進行に応じた挙動を明らかにするとともに、そのダイナミクスを制御するメカニズムを明らかにすることで、姉妹染色分体間接着/解離機構の解明を目指した。本研究ではまず、DNA上に結合させたコヒーシンを一分子レベルで観察する系を確立した。カバーガラス上に両端を繋留させた約50kbpの直鎖DNA上に、精製・蛍光標識したヒトコヒーシン複合体を、コヒーシンローダーScc2-Scc4依存的に結合させたところ、コヒーシンがDNA上で一次元自由拡散運動をする様子が観察された。またこの動きは、コヒーシンのATP加水分解活性の影響をうけるだけでなく、細胞周期の時期特異的にコヒーシンに結合するWapl、 Pds5、Sororinといった因子や、コヒーシンのアセチル化やリン酸化の影響をうけることが明らかになった。更にツメガエル卵抽出液を用いてDNAをクロマチン化させた系では、コヒーシンの挙動がヌクレオソーム形成位置に影響を受けること、またコヒーシンダイナミクスとDNA複製の進行とが密接に関連している可能性を示唆する結果が得られ、当初の計画で期待していた以上の知見を得ることができた。また、一分子観察で得られたコヒーシン修飾因子の作用に関する知見は、ヒト培養細胞およびアフリカツメガエル卵を用いた in vivo系でも確かめられ、当初の計画の通り、接着確立メカニズムの解明に向けた重要な手がかりを得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究業績の概要に記載したとおり、一分子観察系の確立とその解析は当初の計画通り進めることができ、細胞生物学的手法を用いた姉妹染色分体間接着機構の解明も同時に進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は一分子観察で得られた知見を細胞内の状況と比較・解析を行うことで、接着機構の解明を更に進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
一分子観察用固体レーザーの購入を想定していたが、現在使用中のレーザーが予想よりも長く使用できているため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
レーザーが消耗し次第、新しく購入する。
|