2013 Fiscal Year Annual Research Report
細胞世代時間の平均-分散関係と環境に依存しない固有成長性質の抽出
Project/Area Number |
25711008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若本 祐一 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30517884)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 1細胞計測 / 細胞情報・動態 / 成長・分裂 |
Research Abstract |
<大腸菌以外の細胞種に用いることのできるダイナミクス・サイトメーター技術の開発> これまで、大腸菌の1細胞計測用に開発したダイナミクス・サイトメーターを改良し、分裂酵母や動物細胞で利用できる長期1細胞計測技術の確立を目指した。当初は、ダイナミクス・サイトメーターの中で細胞を格納するための溝の大きさを、単純に細胞ごとの大きさに合わせ大きくすることで、大腸菌と同様の計測を実現できないか検討した。しかし実験の結果、分裂酵母や動物細胞では、溝の大きさを変えただけでは、栄養枯渇や用いる半透膜シールからのストレスにより、長期計測は実現できないことが判明した。そこで、アガロースゲルをマイクロ加工することで細胞格納用の溝を作る方法や、半透膜シールの材質の違いの影響を検討した。その結果、酵母ではアガロースゲルを用いた方法により長期計測が実現できる可能性が高いことを確認した。また、L1210白血球細胞を用いた実験では、PDMSフィルムをシールとして用いる方法の有用性を確認している。また、これまでの方法とは異なり、ガラス基板を直接加工するのではなく、全てPDMS中に細胞観察用溝と細胞排出用溝を導入したマイクロデバイスの作製・評価も行った。 <分裂酵母に対する画像解析アルゴリズムの検討> 1細胞計測により得られるタイムラプス画像を解析し、1細胞ごとの細胞サイズや発現量の時間変化、および細胞系譜の取得を可能にする画像解析アルゴリズムの改良をおこない、分裂酵母の増殖に適用できるアルゴリズムを構築した。実際にこのアルゴリズムを用いて、寒天培地上で増殖する分裂酵母の細胞系譜や、細胞サイズ変化の定量情報を取得できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究では、大腸菌以外の細胞種に用いることのできるダイナミクス・サイトメーター技術の確立と、大腸菌以外の細胞種に利用できる画像解析アルゴリズムの開発を目標としていた。前者に関しては、分裂酵母と白血球細胞では、大腸菌と同レベルの長期計測の実現には到っていないが、それを実現するには、微細加工基板上の溝の大きさを変えるという単純な方策ではうまくいかないことを確認した。さらにその対応策として、アガロースゲルのマイクロ加工などの方法を考案し、実際にそれを用いて計測ができる段階に到っている。また、後者に関しては、実際に分裂酵母で用いることのできる画像解析アルゴリズムを構築し、その有用性も確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究結果を受けて、酵母および白血球に用いることのできる1細胞長期計測系の確立を早急におこなう。その上で、これらの計測装置を用い、実際に長期計測を実現させ、増殖や遺伝子発現量などの状態変化を1細胞レベルで安定に取得できるか確認する。 また、あわせて既に確立しているダイナミクス・サイトメーター技術を利用して、大腸菌でこれまで用いてきたW3110とは異なる、B/rなどの細胞株を用いた長期計測もおこない、これまで見いだされている世代時間の平均と分散の線型関係の一般性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の見込みより、消耗品等の使用量を抑えることができ、また予定していた出張も事情によりキャンセルとなったため、その分の経費が次年度使用額として生じた。 今年度は既に2件の国内での学会発表、およびシンガポールでの国際学会において、本研究課題の成果について発表予定であり、それにかかる旅費に、次年度使用額を充てる。また、今年度は微細加工関連機器の消耗部品の交換が必要になる予定であり、それらの費用にも充てる
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Research Products
(9 results)