2016 Fiscal Year Annual Research Report
細胞世代時間の平均-分散関係と環境に依存しない固有成長性質の抽出
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25711008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若本 祐一 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30517884)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 1細胞計測 / 細胞情報・動態 / 成長・分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 分裂酵母における分裂率と死亡率の関係 前年度までの実験で、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeでは、定常環境下において、分裂率と死亡率が世代によらず一定であり、細胞齢に依存した加齢(Aging)が起きないことを明らかにしている。この分裂率と死亡率には線型関係があることも前年度までに示していたが、この定常環境下で起こる突然死の原因を探るため、細胞内に生じるタンパク質凝集体の挙動を1細胞レベルで計測する実験を行った。その結果、従来広く受け入れられていた結果と反し、タンパク質凝集体の量や保持時間と、細胞の世代時間、死亡率のあいだに相関がないことを明らかにした。これにより、タンパク質凝集体の量がある閾値を超えることで、細胞に負荷がかかり死亡するという描像は、少なくとも分裂酵母では成り立たないことが明らかになった。
2. マウス白血球系ガン細胞L1210の1細胞計測 マウス白血球系ガン細胞L1210を対象とした長期1細胞計測を実現する、マイクロデバイスを構築した。これは、上記1で開発した分裂酵母用のデバイスを改変するとともに、動物細胞特有のCO2濃度を制御した顕微鏡システムを組み合わせることで実現した。このデバイスを利用した1細胞計測によって、L1210細胞の定常環境下での世代時間の分布や世代間相関を計測し、これまで調べた大腸菌や分裂酵母と異なり、世代時間の世代間相関が強い、世代時間にエピジェネティックな正の相関があることが明らかになった。また、世代時間の相関次元の解析をおこない、世代時間のゆらぎが実は決定論的なダイナミクスに駆動されているという最近の報告(Sandler, et al., Nature, 2015)と相反する結果を得ており、動物細胞の世代時間の変動を理解する上で重要な実験結果を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の分裂酵母を用いた計測結果を受け、細胞死の原因について調べる新たな実験を行ったため、L1210を用いた実験の開始が当初予定よりも遅くなったが、分裂酵母の実験で明らかになった結果は、細胞のAgingやタンパク質凝集の分野にとって極めて重要であり、必要な研究であったと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、H28年度で終了予定であったが、分裂酵母について報告した論文の査読の対応で追加実験が必要となったため、研究期間を1年間延長し、これを行う予定である。また、L1210の計測についてもこれをまとめ、論文として報告する予定である。
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Causes of Carryover |
分裂酵母の結果についてまとめた論文の査読対応で追加実験が必要となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加実験で必要となる試薬、およびL1210細胞の計測で必要となる試薬などの消耗品費にあてる予定。
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Research Products
(11 results)