2014 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエの近縁種比較に基づく遺伝子量補償機構の分子進化過程の解明
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25711023
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
野澤 昌文 国立遺伝学研究所, 生命情報研究センター, 助教 (50623534)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ゲノム / 進化 / 遺伝学 / 遺伝子 / 昆虫 / 遺伝子量補償 / トランスクリプトーム / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は、Neo性染色体を持つDrosophila mirandaの別系統(系統番号17)について、リシーケンスによるゲノム配列決定と様々な組織、発生段階におけるトランスクリプトーム配列の決定を行った。近縁種D. pseudoobscuraについては、引き続きトランスクリプトーム配列の決定を継続した。また、もう少し遠縁でNeo性染色体を持たないD. obscuraのペアエンド及びメイトペアライブラリを作成し、高精度ゲノム配列の決定に着手した。さらに、この種のトランスクリプトーム配列の決定にも着手した。 上記の実験、解析の結果、D. obscuraについてはScaffold N50が約470kb、サイズが約180Mbのゲノムアセンブリを得ることができた。また、D. miranda、D. pseudoobscura、D. obscuraにおいて発現しているタンパク質コード遺伝子をそれぞれ約13,000個、14,900個、12,900個同定した。これらのデータからD. mirandaのNeo-Xへの遺伝子量補償の発達を検証したところ、その程度は組織や発生段階によって大きく異なっていることが示唆された。また、Neo-Y遺伝子のタンパク質の減衰の程度とNeo-X上のホモログにおける遺伝子量補償の間に弱いながらも有意な相関が見られた。 さらに、H27年度に向けてChIP-seqの準備を開始し、遺伝子量補償複合体(MSL)を構成するタンパク質のうち2つをコードする遺伝子の発現ベクターへのクローニングに成功した。現在抗原タンパクの精製を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた(1)D. miranda別系統のゲノム、トランスクリプトームの決定、(2)D. obscuraゲノム、トランスクリプトームの決定、が予想よりも早く進展した。また、(3)ChIP-seqのための抗体準備も予定通り進んでいる。ただし、(4)D. mirandaにおけるMSLノックアウト変異体の作成はインジェクションが上手くいかず進展していない。 以上を総合的に判断し、研究は当初計画通りおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
D. obscuraのゲノム配列については、追加のシーケンスを行い、更なる高精度なアセンブリ構築を目指す。 D. miranda、D. pseudoobscura、D. obscuraの3種については成虫原基など複数の組織でRNA-seqを行い、さらに遺伝子量補償の組織特異性とその進化基盤を明らかにする。 D. mirandaについて抗体作製を完遂させ、ChIP-seqを重点的に行う。得られた結果から、発生段階によるMSL結合領域の違いの有無を検証する。
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Causes of Carryover |
当初予定していたMSLノックアウト変異体の作成が上手くいかなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
変異体作成を継続して試みるとともに、ChIP-seqに使用する抗体の種類を増やし、またシーケンスするサンプル数を増やすことで、問題を解決しながら前年度未使用金を有効利用する。
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Research Products
(3 results)