2016 Fiscal Year Annual Research Report
異数性による種分化の機構が存在するか?(II) 比較ゲノム解析と再現系からの検証
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25711024
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
菊池 真司 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (80457168)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トレニア / 染色体 / ゲノム分析 / FISH解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、種間雑種の減数分裂細胞で観察された8II+1Iの対合様式から考えられた、トレニア属2種(Torenia fournieri:2n=2x=18とTorenia baillonii:2n=2x=16)の染色体の基本数の違いは異数性に起因する、という仮説を検証することを目的としている。近縁種を採集した後に、それぞれの種の染色体数の決定とともに、DNAを抽出して分子系統学的解析を行った。その結果、2n=16の種は2n=18の系統群から派生したという結果が見られたため、2種の染色体数の変化は染色体の減数によって生じた可能性が高いことがわかった。次に、連鎖解析やfosmid-FISH解析で、T. fournieri ゲノムのScaffoldを9本の染色体上に並べてアッセンブルを完成させた。これにT. bailloniiのショートリードをマップして比較ゲノム解析を試みた。その結果、2種の間に染色体領域の大きな欠失は見つからなかった。そのため、2種は染色体の再配列によって染色体数を変化させた可能性も考えられた。その後、複数のT. fournieri系統を用いて、相反交配も取り入れて複数の種間雑種を育成した。それらの減数分裂を観察すると、8II+1Iの対合様式の他に三価染色体が高頻度で観察される個体も見つかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はトレニア2種が異数性によって種分化した可能性を検証し、生物進化における異数性の影響を再考するものである。近縁野生種の採集と分子系統解析、レファレンスゲノムの整備と比較ゲノム解析、多数の種間雑種や二基三倍体を用いたゲノム分析から、2種は染色体の再配列によって染色体数が変化した可能性が強まった。一方、どのような染色体突然変異が生じたかは現在のところ明らかになっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
FISH解析によって、T. baillonii染色体上にT. fournieriのfosmid配列由来のFISHシグナルを観察することができた。今後、大規模なFISH解析を行って2種のCollinearityを調査することで、2種の間で染色体突然変異が生じているか、またそれは染色体数の変化に関係するかを明らかにすることができると考えている。特に減数分裂第一分裂中期で観察される一価染色体や三価染色体にFISHシグナルを形成するfosmidクローンを中心に、T. bailloniiの染色体でFISH解析を進める。
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Causes of Carryover |
グロースチャンバー購入の見送りや次世代シークエンサー解析などで研究費の使用額を低く抑えられた。また、補助事業期間である4年間の間に、研究の目的であるトレニア2種の染色体数の変化についていくつかの新しい知見が得られたが、染色体の変化に関連する染色体突然変異の実体を明らかにはできなかった。研究の完成に向けてさらなる解析が必要であると判断したため、残額を翌年度分の研究費として使用したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に、T. fournieriのfosmidクローンからのDNA抽出、標識とT. baillonii染色体でのFISH解析に必要な実験試薬に助成金を使用する。また論文や学会発表に係る諸費用に使用する。
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Research Products
(7 results)