2013 Fiscal Year Annual Research Report
根粒菌のエフェクタータンパクによるマメ科植物の共生窒素固定制御機構の解明
Project/Area Number |
25712006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
下田 宜司 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物共生機構研究ユニット, 主任研究員 (80415455)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 根粒菌 / マメ科植物 / エフェクタータンパク |
Research Abstract |
平成25年度は、まず根粒菌のTypeV分泌装置(TONO-AT)の構造を把握するために、ホモロジーモデリングを行った。緑膿菌のエステラーゼタンパクの立体構造をもとに構造を予測した結果、3402aaよりC末端部分が膜貫通バレルからなる分泌装置を構成し、それよりN末端の部分が細胞外に露出していることが予想された。次にTONO-ATが実際にタンパク質を分泌する活性を持つか否かを検証した。バレル部分と細胞外に露出していると考えられる領域の一部を大腸菌で発現させ、培養上清に含まれるタンパクを解析した結果、TONO-ATの一部を分泌タンパクとして同定することができた。さらに培養上清より取得したTONO-ATタンパク質を質量分析により解析し、バレル部分より切断される部位を明らかにした。このことから、TONO-ATが実際にタンパクを分泌する活性を持つことと、TONO-ATの3265aaよりN末端部分が細胞外に分泌されることが確認された。またTONO-ATのエフェクターとしての活性に必要な領域を明らかにするため、N末側の領域(1-300aaまたは1-856aa)とバレル部分とを連結したTONO-ATを作成し、ミヤコグサFix-変異体における表現型を確認した。その結果、TONO-ATに含まれるグリシンリッチなリピートを含む領域がエフェクターの活性に必要であることが分かった。TONO-ATと宿主因子との相互作用の有無については、Yeast two-hybrid法により解析を行ったが、直接の相互作用は見られなかった。 本年度の成果により、TONO-ATの分子構造やタンパクの分泌活性およびエフェクター活性に必要な遺伝子領域について基礎的な情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
根粒菌のTypeV分泌装置(TONO-AT)については、当初ドメインサーチでの大まかな構造しか把握できていなかったが、ホモロジーモデリングを行うことにより、膜貫通バレルとその周辺についてより詳細な構造を把握することができた。タンパクの分泌活性についても、モデリングで得られた構造をもとにコンストラクトを構築し、タンパクの発現量が高い大腸菌を使用することでTONO-ATのバレル部分から切断される部分を明らかにすることができた。さらにTruncationしたTONO-ATを使うことで、宿主の窒素固定表現型を規定するのに必要なドメインについての情報が得られた。しかしながら、実際にTONO-ATのどの部分がエフェクターとして機能しているかについては現時点では明らかにできなかった。 平成25年度に予定していたTONO-ATの局在解析については、N末端部分を宿主細胞で発現させると根の細胞表層での局在がみられた。現時点ではエフェクター領域が正確に特定できていないことから、局在の解析はエフェクター領域を特定したのち再度解析をする必要があると考えている。平成26年度に解析を予定していた宿主因子(SYM104)との相互作用については、Yeast two-hybrid解析では直接的な相互作用は確認できなかったが、組み換えタンパクを用いた解析により、TONO-ATの一部がSYM104によって切断されることが分かった。 本年度は、正確なエフェクター領域を特定するには至らなかったが、TONO-ATの切断部位および活性に必要なドメインについての情報が得られたこと、さらに次年度予定していた宿主因子との相互作用について解析が進んだため、研究計画全体としてはおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度にTypeV分泌装置のホモロジーモデリングを行い、膜貫通バレルと細胞外に露出していると考えられる領域を予測し、分泌に必要な部位を明らかにした。平成26年度は実際に細胞外に分泌されているエフェクター領域を特定するために、タグ配列を導入したTypeV分泌装置を根粒菌で過剰発現させ、培養上清より分泌タンパクの回収を行う。得られた分泌タンパクについては質量分析を利用し、領域を特定する。それとあわせ領域を削ったTypeV遺伝子を用いて、TypeV遺伝子破壊株に対して機能性相補実験を行い、宿主の窒素固定表現型を規定するエフェクター領域を特定する。エフェクター領域を特定できた場合には、根粒内における細胞内局在を解析するとともに、宿主因子(SYM104)との相互作用について解析を進める。またエフェクター領域を宿主植物の根で発現させた場合の窒素固定表現型を確認する。表現型の解析をもとに次年度以降、RNA-seqを用いた発現解析を行い、TypeVエフェクターの宿主の窒素固定活性に与える影響を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に特別研究員を雇用する予定で予算を計上していたが、適任者が見つからなかっため。また分泌タンパクの解析に使用するキットおよび試薬の購入を見込んでいたが、エフェクター領域の特定が当初の計画よりも遅れ、次年度へ解析を持ち越したため。 平成26年度4月より特別研究員を雇用したため、その人件費として使用する。また平成25年度に実施できなかったエフェクタータンパク質の精製や同定に必要な試薬類およびその他の分子遺伝学的解析に必要な試薬類の購入に使用する。
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[Presentation] Exploring Mesorhizobium loti genes that determine strain-specific Fix- phenotype of Lotus japonicus mutant2013
Author(s)
Yoshikazu Shimoda, Hiroko Yamaya, Kazuhiko Saeki, Hiroko Maita, Hideki Hirakawa, Shusei Sato, Yuki Nishigaya, Toshimasa Yamazaki, Hiroshi Kouchi, Yosuke Umehara, Makoto Hayashi
Organizer
18th International Congress on Nitrogen Fixation
Place of Presentation
宮崎、フェニックスリゾートシーガイヤ
Year and Date
20131014-20131018
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