2016 Fiscal Year Annual Research Report
食品の栄養成分の分布状態を三次元分析し可視化するフードスキャナーの開発
Project/Area Number |
25712013
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
高橋 亮 群馬大学, 理工学研究科, 助教 (30375563)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 食品分析 / 非破壊分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品内部の成分または状態の分布を非破壊分析可能な手法には、X線~赤外線までのさまざまな波長の電磁波を用いる方法や電磁気を用いる方法などがあり、種々の農産物の品質検査に利用されている。なかでも X線コンピュータ断層撮影法(Computed Tomography;X線 CT)と核磁気共鳴画像法(nuclear Magnetic Resonance Imaging; MRI)は、それぞれ農産物中の異物(X線 CT)や水分分布(MRI)を完全に非破壊で検出および分析できる手法として大きく期待されている。しかし、X線CTは食品成分分布の分析ができず、またMRIは空間分解能や測定成分項目を増やすと膨大な時間を要するという欠点がある。食品の非破壊分析で求められている、切断などの前処理が不要、多成分に対応、高分解能、および迅速分析の要求を満たすためには、既存の分析手法に替わる新たな分析技術の開発が必須である。本研究では、線源に近赤外(NIR)光を用いたコンピュータ断層撮影法(NIR光CT)を新たに開発することを目的とした。本研究では、ヘテロダイン検波光 CT光学系により、食品中の水分分布の非破壊CT像が取得可能なことが確認された。CT像から水分値を算出する方法が未確立のため研究は未だ発展途上の段階にあることは否めないが、この難問はNIR分光による食品の成分分析そのものがケモメトリクスの手法の上に成立しており、食品ごとに適切な解析条件を与えなくてはならないという問題と同質のものである。逆にこの問題を解決することにより、複数の食品成分の分布と成分値を瞬時に分析することが可能になると考えられる。また食品内部の相対的な屈折率の変化を分析できることを利用することにより、栄養成分以外の情報を取得できる可能性がある。これらの目的の達成のためにさらに研究を続けている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
NIR光CTは、断層イメージ取得時間が短いというX線CTの長所と、食品成分の選択性と定量性に優れるNIR分光の長所を同時に備える分析方法で、近年著者が開発を進めている新しい分析法である。この分析法を開発するうえでの最大の障害は、NIR光線が食品中で屈折および散乱されるために大きな検体の分析が極めて困難なことである。しかし、NIR光CTは食品に限らず生体全般に適用可能と考えられ、例えば標識物質を用いずに癌細胞を検出する技術などへの応用が可能で、学術的にも実用的にも極めて重要な基幹技術となり得る。食品中の成分や状態の分布を非破壊計測することができれば、食の安全・安心を評価する分析機器として活用できるほか、食品の生産・流通・加工・保存・調理・摂食のあらゆるシーンで科学的な活用が可能となる。本研究では、これまで開発してきた光計測技術および食品物性研究の成果を応用し、NIRヘテロダイン干渉法およびNIR光CTを融合することにより、既存の食品分析手法や食品分析装置では困難だった食品の成分を空間的に分析し断層マップとして取得する手法と装置を構築することを目的として研究をすすめた。その結果、提案する光学系により、当初目的とした空間分解能を充分に上回る性能での非破壊分析が可能であることがわかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
NIR光CTでは、水、タンパク質、脂質、糖質、および灰分などの分析が可能ですが、水のNIR吸収が強すぎるため、野菜や肉のような水分の多い食材の分析はあまり適していない。。他方でvis光は水に対する吸収が極めて弱いため、すべての食材の分析が可能である。分析に必要な情報は各食品成分の屈折率がvis光の波長(波長分散)や温度(温度分散)に対してどのように変化するのかを実験的に検証し、それらの情報が得られれば、vis光CTによって食材中の水以外の食品成分の非破壊分析が用意になる可能性がある。
|
Causes of Carryover |
研究成果を効果的に発信する方法について従前のような論文や学会での発表、あるいはウエブサイトでの公開など以外の方法も検討・実施するため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果を効果的に発信するために使用する(おもに動画による公開を検討している)。
|
Research Products
(3 results)