2014 Fiscal Year Annual Research Report
北方林の植物の窒素獲得戦略:冬季における窒素同化とそのエネルギー源に関する研究
Project/Area Number |
25712017
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小山 里奈 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (50378832)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 植物栄養代謝 / 北方林 / 冬季 / 窒素同化 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、厳しい環境下で成立している北方林の維持機構について、植物の窒素養分利用の観点から解明することを目指している。これまで軽視されてきた冬季に着目して、北方林を構成する植物の窒素利用とそれに係るエネルギーについて明らかにすることで、非生育期間とされてきた冬季が北方林の植物の生育に果たす役割を評価することを試みる。 平成26年度は、冬季の初期・中期・後期に野外調査を実施した。調査対象とした北方林の主要構成樹種であるクロトウヒの光合成および窒素同化に関する測定を行った。当初計画では、窒素同化に関する野外における調査は最終年度に実施する計画であったが、調査地としているアラスカ大学フェアバンクス校の研究協力者より、気温や降雪・積雪・融雪などの気象条件、特にその変化のタイミングは年により大きな変動があり、可能な限り長期的に季節変動を調査したほうがよいとのアドバイスを受け、できる限り多数回の野外調査を実施することとした。 最初に実施した冬季の北方林における光合成測定方法確立の試みにより、必要な機器を冬季の野外環境で使用することが困難であることが確認され、野外で採取したサンプルを対象に実験室においてインキュベーター内で測定するという手法を採用した。窒素同化に関しては、研究開始時から引き続き、窒素源として土壌中の硝酸態窒素に着目し、硝酸態窒素同化を司る酵素の活性を測定した。 これらの野外調査と並行して、苗木を用いた栽培実験を実施する計画であったが、低温インキュベーター内の環境条件設定が計画通りに進捗しなかったため、平成26年度中の実験の実施には至らなかった。また、野外調査で対象としているクロトウヒ苗木は日本国内では入手困難であり、同属のアカエゾマツを利用することとして栽培を開始した。本実験については平成27年度に実施する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の冬季に実施した測定において、試薬の汚染によりデータが使用できないことが明らかとなったため、当初平成25年度に実施するとしていた野外調査と測定について、平成26年度に再度実施することとなった。この野外調査と測定は計画通りに進行したが、これにより、また加えて、使用を開始した低温インキュベーター内の環境設定が計画通り進捗しなかったことにより、当初平成26年度に計画していた苗木を用いた栽培実験に遅れが生じた。この栽培実験については、主に平成27年度前半までに完了する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、苗木を用いた栽培実験と野外における調査を並行して実施する予定である。 平成26年度中に栽培を開始したアカエゾマツ苗木を用いて、低温インキュベーター内での光合成と窒素同化に関する測定を行う。 また、上述の通り、気象条件の大きな変動を鑑みて可能な限り長期的に季節変動を調査するため、平成27年度においても冬季に北方林植物の窒素同化と光合成に関する調査を実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
平成25年度に野外調査の回数を変更したことによって、使用した外国旅費が少なくなり、次年度使用額が発生した。平成26年度には当初計画では実施しないことになっていた野外調査を実施することとし、この計画変更に伴って外国旅費の不足分が発生する見込みであったため、その不足分を充当する計画であった。しかし、実際には平成26年度予算内で、当初計画通りにインキュベーターの導入と海外における野外調査の両方が実施可能であった。そのため、平成26年度に平成25年度に発生した次年度使用額を使用せずに済んだため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度の野外調査において、研究計画初年度に導入した光合成測定装置を冬季の北方林で使用したことにより、通常よりも高い頻度でのメンテナンスが必要となる可能性が高いことが明らかとなった。これは、当初計画では計上されていない費用であり、研究遂行に必要な費用でもあることから、この費用として充当することを計画している。
|