2015 Fiscal Year Annual Research Report
組織発生過程におけるGARP complexの役割
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25712034
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
杉本 道彦 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 助教 (10373317)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マウス / 初期発生 / 多能性幹細胞 / 細胞分化 / 組織発生 / 細胞内小胞輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
初期胚性致死変異マウスより同定したVps52遺伝子がコードするVPS52タンパク質を含むGARP complexの、哺乳類発生過程における役割を明らかにするために、Vps52およびその関連遺伝子の変異マウス系統の表現型解析を行った。 GARP complexの構成因子としてVPS52の他にVPS51、VPS53、VPS54が知られている。VPS53およびVPS54のノックアウトマウスはすでに存在しており表現型解析は昨年度に行ったが、VPS51のノックアウトマウスは作製されていなかったため、CRISPR/Cas9 systemを利用してノックアウトマウスを作製した。加えて、VPS52と結合するタンパク質として新たに同定したCCDC132およびTSSC1のノックアウトマウスも同様に作製した。これらの表現型の確認は現在進めているところであるが、予備実験の段階においてVps52ノックアウトマウスで認められる初期胚致死と同様の表現型が確認された。上記の6遺伝子のうちVps54を欠損させた時のみ表現型が異なっていることから、VPS54は哺乳類発生初期においてはVPS52を含むタンパク複合体の機能には必須ではなく、GARP complexを構成する因子は発生過程において必要に応じ入れ替わっていることが示唆される。 Vps52の組織発生過程における役割を解明するため、各種組織特異的Cre発現マウスを用いて解析を進めてきた。肝臓特異的Aflp-Creならびに膵臓特異的Ptf1a-Creが極めて組織特異的かつ効果的にノックアウト解析を行えることを確認した。現在これらマウスを用いて肝臓特異的Vps52ノックアウト、膵臓特異的Vps52ノックアウトの解析を進めている。肝臓特異的ノックアウトでは、オートファジー関連遺伝子Beclin1の肝臓特異的ノックアウトと極めてよく似た表現型が確認された。このことは、GARP complexがオートファジー制御に何らかの形で関わっている可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに同定したタンパク質も含めGARP complexを構成する因子のノックアウトマウスを作製し、発生過程における表現型解析を進めることができた。GARP complex構成因子が発生過程で動的に変換されることを強く示唆する結果が得られており、これまでの知見を覆す新たな成果である。 また、肝臓特異的Vps52ノックアウト解析から、GARP complexがオートファジー制御と関わりを持っていることを示唆する結果が得られた。当初予期していなかった結果であるが、GARP complexがオートファジー制御に関わる因子として新たに付け加えられる可能性が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス初期胚におけるGARP complex構成因子のノックアウト解析:それぞれの因子のノックアウトマウスにおける表現型を更に詳しく調べ、過去に申請者が詳細な解析を行ったVps52ノックアウト胚との類似点・相違点を明らかにし、哺乳類初期発生過程におけるGARP complexの各構成因子の役割を突き止める。 肝臓特異的Vps52ノックアウト、膵臓特異的Vps52ノックアウトの表現型を詳細に解析し、それぞれの臓器の発生過程におけるGARP complexの役割を解明する。また、肝臓特異的ノックアウト解析の結果から新たにオートファジーとの関連性が浮上してきた。そこで、オートファジー関連遺伝子Beclin1の肝臓特異的ノックアウトマウスの表現型との比較を通して、GARP complexがオートファジーとどのように関わっているのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度使用額は当初予定額と大きな差はなかったが、前年度の所属機関変更に伴い生じた次年度使用額の一部が本年度の次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
熊本地震による実験機器の損壊、試薬類の逸失など、甚大な被害が生じたため、機器の修理・再購入、試薬類の再購入に大半を当てる。
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Research Products
(4 results)