2013 Fiscal Year Annual Research Report
カルボランアニオン分子を基軸とする物性・機能・反応性の開拓
Project/Area Number |
25713001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
滝田 良 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 副チームリーダー (50452321)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カルボランアニオン / クロスカップリング / イオン液晶 |
Research Abstract |
安定な1価アニオン分子である、カルボランアニオン (Monocarba-closo-dodecaborate [closo-CHB11H11]-) は、その修飾法の乏しさから、機能性分子としての応用が極めて限られてきました。当研究グループではこのことに着眼し、銅カルボラン種を用いる事を鍵として、アリールハライドとのクロスカップリング反応の開発を行いました。本研究では、まず本反応が極めて高い基質一般性を有する事を明らかにしました。アリール基として、シアノ基やエステルなどの多様な官能基を有する基質、オルト位置換基を有するなど立体障害のある基質、あるいはヘテロ芳香環など多様な官能基の導入が可能でした。アルケニル、アルキニル基も同様に用いる事が可能でした。さらに、一つの芳香環と複数のカルボランアニオンとの連結も容易であることが明らかとなりました。このように本反応により得られる新たなアリールカルボランアニオン誘導体群を基盤として、機能創製に挑戦しています。その中で、例えば、これらの化合物群を用いてアンドロゲン受容体のアンタゴニスト活性評価を行ったところ、高い活性を示し、本骨格のアニオン性ファーマコフォアとしての可能性を見出しました。また、アリールカルボラン骨格をコア構造とするイオン液晶を創製したところ、低い融点を有しており、広い温度範囲で液晶性を示す事を明らかとしました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、開発した反応によって初めて得られるアリールカルボラン誘導体群が、ファーマコフォアやイオン液晶のコア構造として有用である事を見出しており、期待されるユニークな機能発現が実現されています。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はアリールカルボランアニオン誘導体の基礎的な物性についても明らかにしたいと考えています。特に、芳香環が有するπ-芳香族性と、カルボランアニオンが有するσ-芳香族性との電子的な相互作用・影響について評価する予定です。具体的には種々の誘導体について反応性などを検討し、その相関について明らかにします。また理論計算も用いて、詳細を検討します。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
カルボランアニオンは高価であるが、本研究の開始前より予備検討を行っており、昨年度は購入をしなかった。 カルボランアニオン誘導体群の機能解明のために必要な、カルボランアニオンをはじめとする、有機試薬、無機試薬、有機溶剤、ガラス器具などの購入。研究打ち合わせ、成果発表などのための旅費。
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Research Products
(14 results)