2014 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質の規則正しい凝集がたどる運命と生体の恒常性破綻
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25713012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 正幸 京都大学, 白眉センター, 准教授 (80397562)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タンパク質凝集性疾患 / アンチトリプシン欠損症 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質凝集性疾患は、タンパク質の構造に何かしらの異常が生じることを原因とし発症する疾患の一群であり、日本で著名なものとしてアルツハイマー病、パーキンソン病が挙げられる。申請者は近年、アンチトリプシン欠損症という欧米で多くの患者を抱えるタンパク質凝集性疾患の原因解明にに従事してきた。その結果明らかになったのは、タンパク質の異常凝集体は、思ったほど異常な構造をしておらず規則正しい構造であり、なおかつ細胞内で毒性を発揮することできるという事実であった。また昨年度の研究を通して明らかになったのは、アンチトリプシンの凝集体構造は、メカニズムと時間という2つのベクトルを軸に、多様に変化し収束していくということである。
本年度は、多様なアンチトリプシンの凝集体が生体の恒常性破綻に与える影響を中心として検討した。興味深いのは、アンチトリプシンの細胞内における凝集は、アンチトリプシン欠損症のようにアンチトリプシンの家族性変異を原因としなくとも、細胞を炎症などのストレス条件におけば引き起こされ、しかもそれら細胞外へ分泌されるという観察である。つまりアンチトリプシンの凝集体は、細胞の恒常性異常を示すバイオマーカーとなりうる。しかしながら、血液中には正常な単量体アンチトリプシンが大量に存在するため、この異常凝集体の同定には感度良い抗体の作成が必須となる。そこで研究協力を得て、アンチトリプシンの凝集体に特異的な抗体のスクリーニングを現在行っている。さらに興味深いのは、血中に分泌されたアンチトリプシン凝集体がその後どのような運命をたどるである。様々な細胞を用いた実験によると、アンチトリプシンは単量体よりも凝集体の方が、より多く細胞内に取り込まれることを観察した。またその取り込みに細胞特異性が存在することも興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はこれまで、25年度にアンチトリプシンの多様な凝集体形成とその細胞内相互作用を明らかにし、26年度に生体の恒常性破綻を特定する方法として、アンチトリプシンの凝集体形成と細胞外への分泌に着目し、抗体のスクリーニングに着手した。これらは、その詳細な内容こそ研究計画調書に示したものとは若干異なるものの、その達成の大筋は全くずれていない。しかし、その各々については検討・確認を行うべき点が残っており、早急に内容を整理し報告できる形にまとめたいと考えている。またアンチトリプシンの凝集体に対して特異的に反応する抗体のスクリーニングを早急く終えることが、本研究を大幅に推進する鍵となるため、非常に期待している。それは他のタンパク質凝集性疾患を新たな視点から理解することにもつながるであろう。これらのことから、総合的には、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで2年間における成果の確認と報告、アンチトリプシンの凝集体に特異的な抗体のスクリーニングを終えることが、27年度の最初の推進方策となる。その後の推進方策として重要と考えられるのは、(1)老化のモデルとして線虫を用いて、アンチトリプシンまたはその他のタンパク質の規則正しい凝集体が形成されていないかを検討することである。その結果を元に、老化モデルマウスの血液を用いた解析を行う。また、やや発展的かもしれないが、その他として、(2)アンチトリプシンで観察されたタンパク質の規則正しい凝集体の形成に関して、その一般性をもう一度詳細に検討する必要がある。生体の恒常性破綻を感知する可能性があるタンパク質の特徴とは、生理的に、生物物理学的にどのようなものであるのか。研究対象となるターゲットタンパク質を明確に絞るための、大きな分岐点となろう。
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Remarks |
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