2015 Fiscal Year Annual Research Report
肝臓における細胞分化の破綻と疾患の発症をつなぐ分子機構の解明
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25713014
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鈴木 淳史 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30415195)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肝臓 / 再生 / 癌 / 細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓は高い再生能を有するが、その一方で、再生の破綻により多くの疾患が発症する。我々は、これまでに肝再生を担う細胞の機能解析や肝再生を制御する分子機構について研究を進めてきた。その中で、障害によって正常な再生応答から逸脱した状況に陥った場合では、肝細胞の分化状態が破綻し、疾患の発症へつながることが明らかとなった。そこで本研究では、肝細胞の分化状態の破綻と疾患の発症をつなぐ分子機構の解明を目指して研究を行った。 肝臓における難治性疾患のひとつである肝内胆管がんは、従来、胆管上皮細胞を起源とする腫瘍であると考えられていた。ところが、我々は、肝内胆管がんが、胆管上皮細胞ではなく、肝細胞から生じる腫瘍であることを発見した。また、肝細胞の運命転換にはNotchシグナルの活性化が重要であり、その阻害は、肝細胞の運命転換を抑制することも判明した。そこで平成27年度では、肝内胆管がん発症過程における肝細胞のNotchシグナル活性化機序の解明を目指して研究を進めた。その結果、肝内胆管がんを誘発する肝障害により、Notchリガンドのひとつ、Jagged-1の発現が肝臓内で一過的に上昇することを見出した。また、Jagged-1は肝臓中のマクロファージであるクッパー細胞が発現し、肝細胞の運命転換を誘導するだけでなく、肝細胞の死滅、並びにマウス個体の死滅を防ぐ働きを有することが判明した(論文投稿中)。以上の結果は、肝細胞の分化状態の破綻と疾患の発症をつなぐ分子機構の理解を大きく進める成果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに行った研究により、肝内胆管がんの形成にともなう肝細胞から胆管上皮細胞への運命転換機構の詳細を明らかにした。このことから、肝細胞の分化状態の破綻と疾患の発症をつなぐ分子機構の理解に向けておおむね順調に研究が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、肝細胞分化の破綻を導くシグナル制御やエピゲノム変化に着目しながら、引き続き生体内外の解析を通じて多角的に研究を進め、肝臓における疾患の原因究明や治療法の開発に貢献すべく研究を発展させていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用分は全額基金に相当する。現在投稿中の論文に対するリバイス実験の必要性や研究の順調な進展にともなう研究の拡大を考慮し、研究費をより効果的に使用するために次年度以降での使用を決定した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在投稿中の論文に対するリバイス実験や研究の拡大に必要な物品費の補充、並びに、研究成果発表のための旅費、人件費、論文投稿料などに使用する予定である。
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