2013 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌とインフラマゾームによるインフルエンザウイルス特異的免疫応答の制御
Project/Area Number |
25713018
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
一戸 猛志 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10571820)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ウィルス感染 / 自然免疫 / inflammasome / ミトコンドリア / 炎症 / 腸内細菌 |
Research Abstract |
申請者らはこれまでに、生体内でのinflammasomeの活性化が、インフルエンザウイルス特異的な免疫応答を制御することを明らかにしてきた(J Exp Med. 2009, Nat Immunol. 2013)。また、NLRP3 inflammasomeは、インフルエンザウイルスや脳心筋炎ウイルスのviroporin(ウイルスがコードするイオンチャネルタンパク質)により活性化すること(Nat Immunol. 2010, PLoS Pathog. 2012)、麻疹ウイルスがNLRP3 inflammasome依存的なIL-betaの産生を抑制していること(J Virol. 2011)、ある種の腸内細菌がインフルエンザウイルス特異的な免疫応答を制御していること(Proc Natl Acad Sci U S A. 2011)などを明らかにしてきた。これらのことから、ウイルス感染によるNLRP3 inflammasomeの活性化メカニズムと腸内細菌によるウイルス特異的な免疫応答の制御機構を理解することは、効果的なワクチン開発に役立つと期待される。 本研究では、インフルエンザウイルス、脳心筋炎ウイルス、麻疹ウイルスが感染すると、活性化したNLRP3が、ミトコンドリア外膜タンパク質のmitofusin 2(Mfn2)に結合することを明らかにした(Proc Natl Acad Sci U S A. 2013)。このNLRP3とMfn2の結合は、ウイルス感染によるNLRP3 inflammasomeの活性化とIL-1betaの産生に必要であった。 またマウスに4種類の抗生物質(アンピシリン、ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン)を飲ませておくと、インフルエンザウイルス感染後のウイルス特異的な免疫応答が減弱することを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウイルス感染によるNLRP3 inflammasomeの活性化メカニズムについては、2013年10月に論文を発表することができた(Ichinohe et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Oct 29;110(44):17963-8)。また腸内細菌によるインフルエンザウイルス特異的な免疫応答の制御機構に関しては、マウスに4種類の抗生物質(アンピシリン、ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン)を飲ませることにより、インフルエンザウイルス感染後のウイルス特異的な免疫応答が低下することを確認した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回、インフルエンザウイルス感染によるNLRP3 inflammasomeの活性化には、ミトコンドリアの膜電位が必要であることが明らかとなった(Ichinohe et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013)。インフルエンザウイルスのPB1-F2タンパク質は、ミトコンドリアの膜電位を低下させて、I型インターフェロンを抑制するという報告もあることから(Varga et al. J Virol. 2012)、今後はこのPB1-F2タンパク質がNLRP3 inflammasomeを抑制するかどうかを解析していく予定である。 またマウスに4種類の抗生物質(アンピシリン、ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン)を飲ませることにより、インフルエンザウイルス感染後のウイルス特異的な免疫応答の低下を確認することができたので、今後は、通常の水を飲ませたマウスと抗生物質を飲ませたマウスの盲腸からDNAを抽出し、次世代シークエンサーにより2つのグループにおける腸内細菌叢の違いを明らかにしていく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、マウスにインフルエンザウイルスを感染後、ウイルス特異的な免疫応答を解析するため、P2A動物実験施設での感染実験が必要不可欠であり、インフルエンザウイルスに感染したマウスを飼育するためのアイソレーターが必要である。購入が遅れた理由は、このアイソレーターを入れる予定のP2A実験室が工事中であったため。 昭和科学社製陰陽圧アイソレーターを購入する。残額もすべて消耗品に使用する。
|