2014 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌とインフラマゾームによるインフルエンザウイルス特異的免疫応答の制御
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25713018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
一戸 猛志 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10571820)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ウイルス感染 / 自然免疫 / inflammasome / ミトコンドリア / 炎症 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はH25年度に、インフルエンザウイルス、脳心筋炎ウイルス、麻疹ウイルスが感染すると、活性化したNLRP3が、ミトコンドリア外膜タンパク質のmitofusin 2(Mfn2)に結合することを明らかにした(Proc Nat Acad Sci U S A. 2013)。このNLRP3とMfn2の結合は、ウイルス感染によるNLRP3 inflammasomeの活性化とIL-1betaの産生に必要であった。またマウスに4種類の抗生物質(アンピシリン、ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン)を飲ませておくと、インフルエンザウイルス感染後のウイルス特異的な免疫応答が減弱することを確認した。H26年度には、インフルエンザウイルスのPB1-F2タンパク質が、TOM40チャネルを介してミトコンドリアの膜間スペースへ輸送され、ミトコンドリアの膜電位を低下(連結したミトコンドリアの断片化)させることにより、NLRP3 inflammasomeの活性化とそれに続くIL-1betaの分泌を抑制していることを明らかにした(Nat Commun. 2014)。また4種類の抗生物質(アンピシリン、ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン)を飲ませたマウスの糞便からbacteria DNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて腸内細菌叢を解析したところ、抗生物質を飲ませたマウスでは、通常の水を与えられたマウスに存在する腸内細菌がほとんど検出できず、99%以上がある一種類の腸内細菌に限定されていることを明らかにすることができた。また無菌マウスでは腸内発酵が起こらないため,未消化物の蓄積により盲腸が肥大しているが、無菌マウスにヒトの腸内細菌を移植すると盲腸のサイズが通常の大きさに戻ることを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インフルエンザウイルス感染によるNLRP3 inflammasomeの制御については、インフルエンザウイルスPB1-F2タンパク質がTOM40チャネルを介してミトコンドリア膜間スペースへ輸送され、ミトコンドリアの膜電位を低下(連結したミトコンドリアの断片化)させることにより、NLRP3 inflammasomeの活性化を抑制していることを明らかにすることができた。この研究成果は、2014年8月に論文を発表することができた(Yoshizumi et al. Nat Commun. 2014 Aug 20;5:4713)。また腸内細菌によるインフルエンザウイルス特異的な免疫応答の制御機構に関しては、これまでは通常の水または4種類の抗生物質(アンピシリン、ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン)を飲ませたマウスの糞便を培養プレートで培養し、培養可能な腸内細菌の割合だけしか解析してこなかった。しかし今回、4種類の抗生物質(アンピシリン、ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン)を飲ませたマウスの糞便からbacteria DNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて腸内細菌叢を解析したところ、プレートで培養する方法では見えてこなかったさまざまな腸内細菌を同定することに成功した。また抗生物質を飲ませたマウスでは、通常の水を与えられたマウスに存在する腸内細菌がほとんど検出できず、非常に興味深いことに99%以上がある一種類の腸内細菌に限定されていることを明らかにすることができた。また無菌マウスでは腸内発酵が起こらないため,未消化物の蓄積により盲腸が肥大しているが、無菌マウスにヒトの腸内細菌を移植すると盲腸のサイズが通常の大きさに戻ることを確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、インフルエンザウイルスPB1-F2タンパク質が、TOM40チャネルを介してミトコンドリアの膜間スペースへ輸送され、ミトコンドリアの膜電位を低下(連結したミトコンドリアの断片化)させて、NLRP3 inflammasomeの活性化とそれに続くIL-1betaの産生を抑制することを明らかにした(Nat Commun. 2014)。インフルエンザウイルスには、非構造タンパク質であるNS1タンパク質があり、これらはウイルス感染によるインターフェロン応答を抑制することが知られているが、NLRP3 inflammasomeの制御における役割は未知である。今後は、インフルエンザウイルスNS1タンパク質が、NLRP3 inflammasomeを抑制するかどうかを解析していく予定である。具体的にはHEK293T細胞を用いたNLRP3 inflammasomeの再構築系にインフルエンザウイルスNS1発現プラスミドを導入し、コントロールと比較して培養上清中に分泌されるIL-1betaの量が低下するかを確認する。また4種類の抗生物質(アンピシリン、ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン)を飲ませたマウスの糞便からbacteria DNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて腸内細菌叢を解析したところ、99%以上がある一種類の腸内細菌に限定されていることを明らかにすることができたので、無菌マウスに、通常の水を飲ませたマウスの糞便、抗生物質を与えられたマウスの糞便を移植したあと、非致死量のインフルエンザウイルスを経鼻的に感染させて、感染10-14日後のインフルエンザウイルス特異的な抗体応答やT細胞応答について解析していきたい。
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