2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25713023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
吉村 健太郎 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (70516921)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 学習機械 / 大気圧イオン化法 / 迅速診断 / オンサイト分析 |
Research Abstract |
本研究では試料の前処理なく、大気圧下で利用可能な探針エレクトロスプレー法(PESI)と質量分析を組み合わせたシステムにより、外来や手術室、内視鏡検査室などで、医師が即時にがんを診断可能な診断支援装置を開発することを目的としている。 本システムでは、得られたマススペクトル中に内包されるマーカー分子となりうる特定のピークに着目するのではなく、全てのピークのイオン強度を捉え、これにベイズ理論を応用したアルゴリズムである dual Penalized Logistic Regression Machine (dPLRM)を適用して診断を行うが、そのためには多数の検体より収集したスペクトルデータベースが必要である。現在、学内および外部の研究施設と提携し、腎細胞がんおよび肝細胞がんの多数検体の収集及び、その測定とスペクトルデータの蓄積を進めている。これまでに構築したデータベースを用いてdPLRMを学習させ、盲検データの模擬判定を行ったところ、高確率で病理医による診断結果と一致する結果を得ることができた。 スペクトルの生成/エクスポート、relational databas(RDB)構築、判定結果の提示にはそれぞれ煩雑な手順が存在し、これが判定までの律速となっている。最終的には測定から判定までを数分で完了する統合システムの構築を目指しており、各工程の自動化及び連結が必須である。現在までに上記の各工程を自動化するソフトウェアおよびプログラムを完成させ、作業量を大幅に低減することができた。また、膨大な患者情報、測定データ、各種記録を管理するために、情報統合管理システムである電子カルテの構築を行った。これらのプログラムは各種作業の効率化のみならず、ヒューマンエラーの回避にも効果を発揮する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
検体収集及び測定、データベース構築:本学附属病院及び外部施設の協力を得て、肝細胞がん110症例、腎細胞がん191症例より非がん部およびがん部の1034切片(検体)を収集した。平成25~27年度にかけて1000件の測定を行う予定であったが、予測以上のペースでの検体の供給があったため、初年度に目標数を達成することができた。上記の検体を測定し12753個のスペクトルデータを収集し、さらにデータベースの構築が完了している。 盲検データの判定結果:構築したデータベースを用いてdPLRMを学習させ、盲検データの模擬判定を行ったところ、病理医による診断結果と98%以上一致する結果を得た。 ソフトウェア:測定データよりマススペクトルを生成しテキスト形式でエクスポートするソフトウェア、RDBの構築プログラムおよび、判定結果を提示するソフトウェアの構築が終了し、作業効率の向上と手作業によるヒューマンエラーの回避を実現した。 機器の改良:26年度より着手予定であった、検出可能分子種の拡大及び、測定可能な検体サイズの拡張するためのイオン化部の改良を行った。従来型のイオン化部では測定可能な検体のサイズは最大で数cm角であったが、イオン検出孔をステンレスチューブで延長することで、人体にも直接使用できる仕様となった。生きたマウスを用いてテストを行ったところ、肝臓のマススペクトルを直接得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
検体数、検体種拡大:引き続き肝細胞がんおよび腎細胞がんの検体の収集と測定を行う。今後は消化器粘膜とリンパ節の収集も開始しデータベース構築を行う。また、上記以外の種々のがんに関しても少数の検体を用いた測定を行い、スペクトルの取得が可能であるかを検討し、今後のターゲットを策定する。 診断精度の向上:現在のデータベースを用いた診断では病理医による診断結果と98%以上一致する結果を得ているが、データベース中には不良スペクトルや、そもそも病理医においても診断が難しい症例が含まれており、これが2%のエラーの原因であると考えられる。今後、判定エラーとなった検体のデータや、診断結果を精査し、更なる判定精度の向上に向けたデータベースの最適化を行う。 ソフトウェアの連結:測定後のデータ処理にかかる時間を短縮し、判定結果の提示までを数分以内に行うことを目指し、現在手作業で行っている各工程間のデータの移行や処理を連結/自動化する。各作業終了をキューにしてデータの受け渡しや次のプログラムを実行するコマンドを作成する。 判定可能検体の拡大、オンサイト測定:現在検出可能な分子種のみでは、将来的に精度の限界に尽き当たるため、脂質成分以外の生体分子を検出するための条件を検討する。また、手術場での人体への直接使用を目指し、イオン化部とイオンオリフィスのインターフェースの改良を行い、測定可能な検体サイズの無制限化を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費の使用における端数である。 平成26年度直接経費に補填する。
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