2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25713023
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
吉村 健太郎 山梨大学, 総合研究部, 助教 (70516921)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 学習機械 / バルクデータ解析 / がん診断 / オンサイト質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓、腎臓検体測定によるデータ拡充:昨年度に引き続き、肝臓と腎臓の非がん部およびがん部検体のマススペクトルデータ収集とデータベース構築を行った。最終的に腎臓18,231スペクトル(1,823切片)、肝臓12,391スペクトル(1,093切片)からなるデータベースを構築するこができた。これを学習機械に学習させ交差検証を行った結果、病理医による診断との一致率が肝臓において97.4%、腎臓において95.3%と目標を達成した。 多種類のがんへの応用:肝臓がん、腎臓がんに加えて胃粘膜がん、大腸粘膜がん、口腔粘膜がん、膵臓がん、リンパ節転移の検体を測定し、マススペクトルデータを収集した。消化器粘膜に関しては既に1,400切片以上の測定が完了しており、がん診断アルゴリズムの構築を進めている。 データ管理/統計解析ソフトウェア開発:膨大なマススペクトルデータを管理、編集し、さらに統計解析と結果の提示が可能なソフトウェアの開発がほぼ完了した。 イオン化、質量分析システムの改良:サンプルプレート、探針を規格化することでイオン検出、マススペクトル取得の簡便性と再現性を向上させた。これにより多数検体の測定とデータベース構築のスループットが向上する。また手術場でのオンサイト利用を目指し、人体に直接使用可能なシステムに改良することを試みていたがその試作機が完成し、生きたマウスから薬剤動態や薬剤投与による代謝産物の変化をリアルタイムに検出することに成功した。同システムを用いれば術中のリンパ節転移の迅速診断をオンサイトで行うことが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・肝細胞がんおよび腎細胞がんのデータ収集と判定アルゴリズムの構築が既に完成し、現在さらに多種のがん検体のデータ収集に移行している。消化器粘膜は1,400切片を越えており、判別アルゴリズム構築もほぼ可能な状態となっている。消化器粘膜の他にも口腔粘膜、膵臓、リンパ節検体の測定を開始しており、当初予定していたよりも多くのがん種の判別が可能となる。 ・データの管理や統計解析、結果の提示を行うための各種プログラムが構築でき、また各工程の連結が完了した。測定から結果の提示までを臨床現場で利用可能とするグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)も完成しており、本診断システム全体が実使用可能な状態となっており、これは予定よりも早い進展である。判別分析としては当初dPLRMのみを利用することを予定していたが、その他の手法を導入するための検討を始めており、より目的ごとの利用が可能な統計解析/判別分析プログラムの構築が見込める様になった。 ・本システムではマススペクトルパタン全体を用いて非がん/がんの判別を行うため、ピークの分子同定が不要であったが、発がんや進展の分子メカニズム解明に向けて分子の同定も開始した。 ・研究期間内においてオンサイト診断が可能なシステムの構築を目標としていたが、既に実用可能なレベルのシステムを完成させることができた。このシステムは術中の人体への直接利用による迅速判定のみならず、オンサイトリアルタイムメタボローム解析等にも応用可能であり、更なる展開が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
適応がん種の拡大:当初予定していたよりも早い時期に目標としていたがん種のデータベースと判定アルゴリズムが構築できたため、さらに膵管擦過細胞、白血病細胞、膀胱がん、脳腫瘍検体のデータを収集し、適応がん種の拡大を図る。 ソフトウェアと判定アルゴリズムの改良:既にデータ管理と解析を行うためのソフトウェアが完成したが、膨大なマススペクトルデータを扱う中で一部エラーが生じることや、処理にやや時間を要する(数分)という問題があるため、これらを改善し大きなデータサイズの取扱いに対応させる。またこれまで判別分析はdPLRMのみを用いていたが、より確度の高いがん判定を行うために、support vector machineやロジスティック回帰、部分的最少二乗法-判別分析などの多種類の手法を導入し比較検討する。 データクオリティーとスループットの向上:サンプルプレートや探針の規格化によりマススペクトルの再現性は大きく向上したが、検体によっては測定に10分以上の時間を要する場合がある。探針駆動を調節することでイオンの検出を微調整するがこれには技術が必要で、再現性にも影響を与えるため全ての検体で確実にイオンの検出が可能となるように測定法を規格化する。
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Causes of Carryover |
直接経費の使用における端数である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度直接経費に補填する。
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