2014 Fiscal Year Annual Research Report
オプトジェネティクスによる「うつ病のセロトニン仮説」への挑戦
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25713043
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大村 優 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80597659)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 精神薬理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、主に「脳内セロトニン遊離量の減少はうつ様行動を増加させるのか?」という問いに取り組む計画であった。うつ様行動の測定には平成25年度同様、尾懸垂試験、強制水泳試験を用いた。尾懸垂試験、強制水泳試験は逃避不可能なストレスを負荷された際の無動時間を測定し、行動学的絶望の程度を推し量るものである。 基本的な実験デザインは非常にシンプルである。中枢セロトニン神経細胞にのみアーキロドプシン(ArchT)を発現するマウス(セロトニン神経活動低下モデルマウス)の背側縫線核もしくは正中縫線核に光ファイバーを埋め込み、光照射によってセロトニン神経の活動を抑制することにより、うつ様行動が増加するかどうかを検証した。 まずセロトニン神経活動低下モデルマウスの妥当性検証のためにマイクロダイアリシス法を用いて縫線核光照射によるセロトニン遊離の減少を確認し、良好な結果を得た。 行動実験の結果としては、背側縫線核と正中縫線核のどちらのセロトニン神経活動を抑制しても、無動時間は増加しなかった。このように、背側縫線核と正中縫線核のどちらのセロトニン神経活動抑制も、うつ様行動の増加を引き起こさなかった。ただし、セロトニン神経活動の抑制の効果は急性には生じない可能性があるため、セロトニン神経活動を長期的に抑制、もしくはセロトニン神経を破壊する実験が今後必要になるかもしれない。少なくとも今回の成果により、一過性のセロトニン神経活動抑制はうつ様行動増加を引き起こさないことが示されたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、主に「脳内セロトニン遊離量の減少はうつ様行動を増加させるのか?」という問いに取り組む計画であった。当初の予定通りの実験を無事終了したが、予定以上の進展は無かったため、概ね順調とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、主に③脳のどの部位のセロトニン遊離量の増減がうつ様行動に重要なのか?に取り組む。縫線核のような起始核ではなく、セロトニン神経の投射先(前頭前野、扁桃体、側坐核、海馬、中隔、背側線条体、等々)に光を照射することにより、脳のどの部位のセロトニン遊離が特にうつ様行動に重要なのかを特定する。うつ様行動の測定はこれまでと同様の手法(強制水泳試験、尾懸垂試験など)で行う。この検討には以下の二つの理由により、長い時間を要すると考えられる。 1.セロトニン神経の投射部位が多岐にわたるため、多くの実験が必要とされる。 2.投射部位を直接光照射することによって機能的に影響を与えるほどのセロトニン遊離増加もしくは減少を引き起こせるかどうかが現在のところ不透明である。 1.の問題については、先行研究からある程度の予測はできる。例えば内側前頭前皮質、扁桃体、海馬はうつ様行動との関連が繰り返し指摘されてきた脳領域である(e.g. Hamani et al., 2010)。まずはこれらの領域を光照射し、2.の問題を解決できる方法を探る。その上でうつ様行動への影響を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
遺伝子改変マウスの作製依頼をしていたが、生物を扱う作業のため確実な納期というものはない。実際先方の作製作業に若干の遅れが生じて納期が遅れたために3月中に支払うことが不可能となったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画通り、マウス作製料金の支払いに使用する。
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Research Products
(3 results)