2015 Fiscal Year Research-status Report
動的システム解析における組合せ的な行列計算手法の研究
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25730009
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
高松 瑞代 中央大学, 理工学部, 准教授 (70580059)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 動的システム解析 / Kronecker標準形 / 可制御性 / 混合行列理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気回路や機械力学系などの動的システムの解析では,行列束のKronecker標準形が重要な役割を果たす.Kronecker標準形の計算法は多数提案されているが,行列束が非正則な場合ついてはまだ多くの課題が残されている.本研究の目的は,背景にある物理モデルの情報や行列束の零・非零構造を利用することで,Kronecker標準形を効率的に計算する手法を開発することである.
動的システム解析や微分代数方程式の分野において,数値情報を捨象することでグラフ理論に基づく手法を利用する構造的アプローチが研究されてきた.動的システムを記述する行列には構造方程式の係数である正確な数値が現れることから,正確な数値と独立パラメータを区別する混合行列の概念が1985年に室田・伊理によって提唱されている.数値を二種類に区別するのは数学モデルとして非常に自然な議論であり,混合行列はこれまで様々な分野に応用されてきた.正則な混合行列束のKronecker標準形に対しては,小行列式の最大次数を経由する計算法と展開行列の階数を利用する計算法が提案されている.
本年度は,非正則な行列束のKronecker標準形に対して提案されていた構造的アプローチに基づく結果を,物理次元に関する整合性の仮定を満たす混合行列束に拡張し,Kronecker標準形の構造指数をマトロイド理論的に解析した.さらに制御分野への応用として,動的システムの構造可制御部分空間の次元を計算するアルゴリズムを開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物理次元に関する整合性の仮定を満たす非正則な混合行列束に対して,Kronecker標準形の構造指数をマトロイド理論的に解析した.この研究の過程でKronecker標準形の行指数・列指数と可制御部分空間との関係が明らかになり,現在までに行っている研究が制御分野にも応用できることがわかった.さらに,Kronecker標準形の研究で得られた知見により,動的システム解析で普及しているPryceの手法を拡張できる知見を得られたため,おおむね順調に進んでいるということができる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,Kronecker標準形の研究で得られた知見に基づき,Pryceの手法の拡張を行う.Pryceの手法は,動的システムを記述する微分代数方程式の指数減少法の基盤となっており,微分代数方程式を解くソフトウェアに導入され,現在でも広く使われている.しかしこの手法は構造的アプローチであるため,入力によっては結果が正しくないという大きな問題点がある.Pryceの手法を拡張し,最適性を保証する効率的なアルゴリズムの開発を目指す.
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Causes of Carryover |
Kronecker標準形の研究の進展に伴い,当初予期し得なかったPryceの手法に関する新たな知見が得られた.Pryceの手法は動的システム解析に対する構造的アプローチとして広く普及しているものであるため,Pryceの手法の拡張は本研究課題において重要な位置を占める.そのため研究計画の変更の必要が生じ,来年度まで研究を続けることになった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果発表に重点を置き,主として旅費に使用する.また,一部を物品費に使用する.
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Research Products
(3 results)