2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25730012
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
坂口 隆之 山形大学, 教育文化学部, 講師 (10436496)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 時空間点過程 / インフルエンザ |
Research Abstract |
感染症がどのように人々の間に広まり,そして終息を迎えるのか,そのメカニズムを統計的に記述することは疫学的にも統計学的にも意義がある.本研究の目的は,統計モデル(時空間点過程モデル)を用いてインフルエンザの伝播プロセスを統計数理的に説明することである. インフルエンザの感染は人‐人の接触によって引き起こされるため,感染者がいつどこに存在するかという情報に加え,感染者がどの程度の人と接触するかという情報は重要だと考えられる.人‐人の接触機会に相関するであろう人口や人の流れには地域差がある.そこで,これらの情報を地域別データとしてモデルに取り込むことを考えた. 本年度は,Meyer(2009)に基づき,地域別インフルエンザ罹患者数データと人口データによる単純な時空間点過程モデルについて検討をした.ここで,人口データは国勢調査によりいくつかの方法によって集計・結果の公表がなされている.本研究では,公表項目が多く使い勝手の良い地域メッシュ統計を利用する. ただし,地域メッシュ統計が精度の上で時空間分析に耐えうるか否かは明らかでなく,その利用可能性には検討を要する.小池(2011)は首都圏において地域メッシュ統計による時空間分析がどの程度の精度で可能であるかを考察した.本研究では,地方中枢都市の1つである仙台市およびその周辺においてインフルエンザ伝播モデルのデータ当てはめを予定している.そこで,仙台市における地域メッシュ統計を用いて,先行研究の追試をおこなった.その結果,仙台市における地域メッシュ統計の利用は概ね可能であるという結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の当初の予定は,①基礎知識の吸収と整理,②実証用データの検討,③モデル構築の3つであった.このうち,②において,時空間分析をする際のデータの取り扱いに検討課題が生じた.地域メッシュ統計は時代の変遷とともに測定の方法(メッシュサイズ,測地系)が変化している.そのため,同一区域のメッシュを時系列で追っているつもりであっても,ある年次を境にして対象区域のメッシュにずれが生じてしまう.小池(2011)はこの問題に着目し,小地域統計の時系列分析における利用可能性を首都圏のデータにより検証している.本年度は,小池(2011)に習い,東北地方の中枢都市である仙台市において,検証のための追試をおこなうことを優先した.これにより,当初予定していた進度よりもやや遅れたペースで研究が進行することとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは人口データのみを補助変数として用いた最も単純なモデルを考えた.次のステップとして人口データ以外の補助変数をモデルへ取り込むことを検討する. 補助変数の候補として,まずは国勢調査の通勤・通学による流入人口データを考えている.これによって,人の流れをモデルに反映させる.また,近年では,インフルエンザの流行状況をいち早く捉えるため,学校の出欠情報を利用する工夫がおこなわれている.この情報をモデルに取り込むことができれば,児童・生徒の罹患状況をより詳細に記述できるであろう. ここで,複数種の空間データを用いた分析をする際にはChange of Support Problem(COSP)に注意する必要がある.一般に,異なる空間データは,異なる空間スケールで集計されていることが多い.このような空間スケールの違いによってもたらされる分析上の困難さをCOSPという.モデルに補助データを追加する上で,COSPは避けて通れない.現状でCOSPに対してどのようなアプローチが可能であるのかを整理し,有力な手段だと思われるクリギング法や階層ベイズ法といった方法との融合を模索していく.
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