2013 Fiscal Year Research-status Report
システムリリース後の要求変化を許容する動的進化手法とミドルウェアに関する研究
Project/Area Number |
25730038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 博之 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (40508834)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ソフトウェア進化 / 要求工学 / 自己適応システム |
Research Abstract |
本研究の目的は,ソフトウェアシステムの開発において,近年定常化している開発後の要求変化に対しても,システムの動的かつ柔軟な更新を実現することである.具体的には,環境の変化に応じて構成や振舞いを自発的に変化させる自己適応システム(self-adaptive systems)に着目し,開発当初に考慮されていなかった要求変化に追随するための動的変更(動的進化)メカニズムを導入することで,同システムを拡張適用し,これにより,システムリリース後の要求変化を許容する動的進化手法を確立し,同手法を支援するミドルウェアを提供することを目的としている. 平成25年度は各実施計画に従って以下を実施した. テーマ1.ゴールモデルに基づいた進化分析手法の確立:進化に有効となる要求分析法と,システム上での変更箇所同定手法に関する研究を進めた.本テーマでは,要求間の階層構造が記述可能であるゴール指向要求記述を利用し,システム上,つまり実装コード上の変更箇所を同定する手法を検討した.具体的には,ゴールモデルを,振る舞いモデルであるControl loopのアクティビティに従って構造を変化させる,ゴールモデル整形プロセスを導入し,その有効性を評価した. テーマ2.動的進化を実現する自己適応システム用ミドルウェアの構築:テーマ1の成果により同定される変更箇所に対して,動的に変更を実現するためのミドルウェアを検討した.すでに研究代表者の先行研究において,Control loop単位のコンポーネントを手動でロード/アンロードするプログラミングフレームワークは実装していたが,この切り替えの一部自動化を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テーマ1については,要求工学の分野で最高峰の国際会議であるRE 2013(the 21st IEEE International Requirements Engineering (RE) conference)に論文が採録されるなど,想定以上の成果を挙げることができた.ただし,動的進化を実現するためには,更なる整形プロセスの検討が必要と考えられ,今年度は引き続きテーマ1の内容を充実させる予定である. テーマ2についても,自動化の部分については検討を深めることができたが,テーマ1の研究成果をもとに検討が必要な箇所,すなわち,進化範囲の更なる限定化に関する部分については,未検討であるため,これらについては今年度も引き続き検討を進める必要がある. 一方で,研究成果の評価実験については,自動清掃ロボットなどの対象システムの調査を進めることができたため,今年度の実証実験についてはスムーズに開始できるものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,今年度に引き続き,テーマ1とテーマ2の実施内容を完遂させる.まず,テーマ1「ゴールモデルに基づいた進化分析手法の確立」については,自己適応システムに特化した進化分析手法を検討する.併せて,テーマ2「動的進化を実現する自己適応システム用ミドルウェアの構築」については,本ミドルウェアを完成させる.テーマ2については,現在のプログラミングフレームワークに対して,より詳細なコンポーネント制御が可能なように,デプロイ用のAPIを追加導入することで,シームレスな動的進化が可能なミドルウェアを構築する.その後,テーマ1,2の成果を利用して,複数ドメインのソフトウェアに対する進化実験を通じてその有効性を評価する.並行して,これらの成果をそれぞれ国内シンポジウムや国際会議へ投稿し,研究成果を発表する.また,評価を通じて洗練化した分析支援ツール・ミドルウェアをWeb上で公開する予定である. もし,要求変化に対して静的な進化は可能であるが,動的進化,つまり実行中の更新ができない場合は,本研究で扱う進化を明確に定義する.動的進化が可能な要求変化の範囲や,動的進化が可能となる条件を明らかにし,変更のレベルに応じたクラス分けをした上で,各レベルに応じた範囲での動的進化メカニズムを検討・提供する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品については概ね当初の予定通り導入したが,日程の都合上,調査を目的とした国際会議に参加できなかったため,該当分の予算を繰り越すこととなった. 当初の予定通り,調査を目的とした国際会議に上半期中に参加する予定である.会議としては,本テーマとの関連度の高いRE 2014 (The 22nd IEEE International Requirements Engineering Conference ) ,あるいはSASO2014 (The 8th IEEE International Conference on Self-Adaptive and Self-Organizing Systems)を検討している.
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