2014 Fiscal Year Research-status Report
ゆるいメモリ一貫性モデルのための簡潔で柔軟な型システムに関する研究
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25730050
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
前田 俊行 独立行政法人理化学研究所, 計算科学研究機構, チームリーダー (50436557)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | メモリ一貫性モデル / 型システム / プログラム検証 / プログラミング言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、平成25年度に得られた既存のプロセッサアーキテクチャや分散並列プログラミング言語のゆるいメモリ一貫性モデルを表現できるような抽象機械モデルおよびそれにもとづいて設計・検討した型システムの妥当性について検討を行った。その結果、設計した型システムでは、ループや条件分岐の扱いに関して制約が厳しすぎ、よりゆるい類のメモリ一貫性モデル下においては限定的なプログラムしか型検査に通らないことが分かった。これは、設計した型システム下では、基本ブロックをまたがるような命令の並べ替えに関する想定が甘く、ジャンプ命令・分岐命令を越えて制約が影響するようなメモリ一貫性モデルを扱うことに問題があったためである。 上記の問題を解決するため、ジャンプ命令・分岐命令によって基本ブロック間を遷移する際の型付け規則および基本ブロックの事前条件を表す型情報の改良を行った。具体的には、ジャンプ命令・分岐命令の型付けにおいて、未執行の可能性のある命令の副作用を考慮した上で飛び先の事前条件を満たしているか検査するようにし、また並行実行される可能性のある全てのスレッドで合意される不変条件とスレッドローカルな条件を明示的に区別して事前条件において記述できるようにした。 上記の改良により、実際に (ループや分岐を含む) 幾つかのサンプルプログラムを、複数の異なるゆるいメモリ一貫性モデル下において、期待通りに型検査できるようになった。ただし、改良した型システムの課題としては、同一のプログラムであっても異なるメモリ一貫性モデル下においては異なる型情報を付与しなければならないという点などが残っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(平成25年度に得られた) 様々なゆるいメモリ一貫性モデルを扱うことのできるベースとしての抽象機械モデルをもとに、実際に様々なゆるいメモリ一貫性モデル下で、ループや分岐を含むプログラムの型検査を行える型システムの検討・設計を (平成25年度に行った検討を発展させて) 行っており、また幾つかのサンプルプログラムで期待通りの結果が得られたことから、交付申請書に記載した研究の目的の達成に向けておおむね順調に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られた型システムの妥当性の評価および型システムの改良を更にすすめる。特に、同一のプログラムであっても異なるメモリ一貫性モデル下においては異なる型情報を付与しなければならないという問題について、ベースとしての抽象機械モデルの改善も考慮しつつ、より統一的に扱える型情報の表現方法について検討を行う必要があると考えている。また別の方向性としては、得られた型システムにもとづいた型検査器の実装を行い、実際にシステムソフトウェア等のプログラムの一部の記述を試みる等して型システムの実用性の評価を行うこと等が考えられる。
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Causes of Carryover |
投稿した論文が採録されないなど、当初の想定よりも学会発表等の件数が少なく、主に旅費の支出が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の投稿・修正・再投稿をすすめ、またその際には型システム等の改良・実装等も可能であれば行い、主に学会発表(国内・海外)に要する旅費および関連経費として使用することを計画している。
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Research Products
(2 results)