2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25730076
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
尾崎 克久 芝浦工業大学, システム工学部, 准教授 (90434282)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 精度保証付き数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の行列積の誤差解析とブロック実装の研究に続いて,本年度は数値線形代数における基本計算である三角行列の逆行列,LU分解,コレスキー分解について,ブロック計算に対する誤差解析とその実装を行った.これらは科学技術計算に非常に良く使用されるため,精度保証付き数値計算を精度・速度面の両方で効率良く行うことが求められている.標準的なブロック実装では,誤差の上限に関する係数がブロック数×ブロックサイズに比例することを確認し,さらにブロック計算の中にさらにブロック計算を導入した場合の誤差解析について成功した.計算のパフォーマンスを落とさずに,誤差の上限を非常に小さくできることが確認できた.適切なブロックサイズを設定することにより,従来に良く知られている高速なライブラリの関数に対して約1.2倍の計算時間で事前誤差解析による誤差上限を小さくすることが可能となった.よって,浮動小数点演算の誤差解析を用いる精度保証付き数値計算に貢献できる状態になった.問題としては,有向丸めを使用しない精度保証法,行列積に対する区間演算(区間包括)などにすぐに効果を出せる状況である. また,ブロックコレスキー分解の誤差解析とその実装法を,行列の正定値性を保証する精度保証付き数値計算に応用した.事前誤差解析の上限が改良されたことにより,証明に必要な行列に対する負の対角シフト量が小さくなった.これにより,負の平方根を取ることによるコレスキー分解の失敗が起きにくくなるため,正定値性保証付きコレスキー分解が成功しやすくなり,従来の手法よりもより高い条件数を持つ行列まで証明が可能になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに,行列積,三角行列の逆行列,LU分解,コレスキー分解のブロック実装とその誤差解析について研究を行った.誤差解析の結果に対しては目標を達成し,速度については従来の高速なライブラリの関数に対して1.2倍程度の時間で動作することができ,こちらもほぼ目標を達成している.精度保証付き数値計算に応用可能な状況であり,順調に研究が進んでいると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,誤差解析の更なる深化・実装の高速化を推進する.誤差解析に関しては,内積の誤差解析の改良に挑戦する.内積に対する誤差解析は数値線形代数の基本となるが,最新の誤差解析の結果に改良を行えることがわかってきた.よって,この内積の誤差解析の改良を行い,ブロック計算の誤差解析にどのように貢献できるかを議論する.また,8コア以上のCPUや今までに実験を行っていないCPUに対しても,開発しているブロック実装の有効性を検証する.さらに,再帰的なブロック計算などについても有効性を確認し,低速下が確認された場合は実装の改良にも着手する.具体的には1つのブロックに対して並列計算を行う方式から,1つのブロックに対する計算スレッド数を小さくし,複数のブロックを同時に計算する方式などを試してみる.もし,自身の試みで高速化に失敗した場合には,ハイパフォーマンスコンピューティング分野の研究者に助言を求めながら研究を推進していきたい.また提案したブロック計算を精度保証付き数値計算の様々な問題に応用し,分野の発展に寄与したいと考えている.具体的には,区間演算,連立一次方程式の精度保証などから応用をはじめたい.そして,応用した結果に対してフィードバックをかけ,必要があればさらに誤差解析や実装に対して改善または特化させた手法を開発する.また,誤差解析とブロック計算に関する研究成果をまとめたものを論文として執筆・投稿を行っていく.
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Causes of Carryover |
外部講師を招へいし,本研究課題に活かせそうな話を聞きたかったが,今年度は予定を調整できなかった.その謝金分が余っている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に外部講師に対する講演謝礼+交通費として使用する.
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Research Products
(3 results)