2013 Fiscal Year Research-status Report
量子化学大規模並列計算アルゴリズムの開発とその実装
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25730079
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
石村 和也 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 特任研究員 (80390681)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子化学 / 並列計算 / 計算科学 / スーパーコンピュータ / 電子状態 |
Research Abstract |
量子化学計算でよく用いられるHartree-Fock法及び密度汎関数(DFT)法のエネルギー1次微分計算のMPI/OpenMPハイブリッド並列アルゴリズム開発及びその実装を行った。最も計算コストが大きいのは4つのインデックスを持つ2電子クーロン反発項の微分計算であるが、4重ループの最外ループをOpenMPで、第3ループをMPIランクでそれぞれノード内、ノード間に計算を分散させることで、振り分けのコストを極力減らしながら並列化を行った。さらに、DFT計算での汎関数の数値積分についても、グリッド点をMPIとOpenMPで各コアに振り分け、均等な負荷分散も行った。また、Gauss関数を微分すると軌道角運動量は異なるが再びGauss関数が出てくる特徴を生かして、すでに作成されている2電子クーロン反発項ルーチンを再利用することで、プログラム開発を効率的に行った。京コンピュータ2048ノード(16384CPUコア)での180原子系のDFTエネルギー微分計算の並列化効率は95.8%であった。 Hartree-Fock法及びDFT法のエネルギー計算の並列化効率向上にも取り組んだ。Newton-Raphson法を基にした行列対角化を行わないSecond-order SCF法の導入、初期軌道計算を含めた計算全体のハイブリッド並列化を行い、京コンピュータ12288ノード(98304CPUコア)で360原子系のDFT計算時間を測定したところ、並列化効率50%以上を達成し、その実行性能は13%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DFTエネルギー1次微分計算の並列化効率は95%以上となり、非常に高い並列性能を達成した。エネルギー微分計算の並列プログラムの開発により、スーパーコンピュータでナノサイズ分子の構造最適化計算の実行がルーチンワークで行えるようになり、重原子を扱うための有効内殻ポテンシャルの並列計算ルーチンも整備し、金属原子を含むナノ分子やクラスターへの応用計算も可能になった。エネルギー計算で使用する2電子クーロン反発項ルーチンを再利用するためのインターフェイスの整備も行い、エネルギー1次微分だけではなく2次微分など今後のプログラム開発を容易に進めるための土台も作成した。 エネルギー計算については、京コンピュータ10万CPUコアで並列化効率50%以上、実行性能10%以上を達成し、平成26年度「京」一般利用(一般課題)に本プログラムも使用する課題が採択された。 プログラム公開に向けたシンプルな入力形式の整備、元素ごとの細かな指定、頻繁に用いられるルーチンのライブラリ化など、計算及び開発両面で実用的なものにするための準備も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
化学反応の解析で重要となるエネルギー2次微分計算の並列アルゴリズムの開発と実装を行う。25年度に開発した1次微分並列計算アルゴリズムを基に、MPIとOpenMPのハイブリッド並列化を行い、2電子クーロン反発項ルーチンを再利用し、効率的にプログラム開発を行う。 構造最適化計算1ステップは並列効率良く高速に実行できるが、現在座標はCartesianのみ対応しており最適化回数が多くなる問題がある。分子の結合などを考慮した座標系の導入、Energy-Represented DIIS法など効率的な最適化手法の導入により、構造最適化計算全体の高速化にも取り組む。 現在開発しているプログラムをオープンソースライセンスで今年度中に公開する予定であり、マニュアル及びサンプルインプット作成なども進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
PC購入を次年度に遅らせたため、次年度使用額が生じた。 海外出張(アメリカ)とPC購入により使用する。
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Research Products
(6 results)